角川文庫より装い新たに刊行された涼宮ハルヒシリーズ。
今まで一切手を付けてこなかったのでこれを機に読んでみました。
私が知っているのは、主要キャラクターの名前と「普通ではない人」がいるらしいということ。
アニメ化された当時の盛り上がりを知らず、後になって「エンドレスエイト」という言葉だけ覚えた。それから「God knows...」のイントロのギター、格好よくて好き。
まず、読みながら驚いたのは想定以上に「普通ではない人」が登場したこと。
長門有希というキャラクターがどうやら人ならざるものであるらしい、ということは事前に知っていたことだけれど、加えて未来人や超能力者までいるなんて。
世界五分前仮説など様々な考えを持ち出しては、語り手であるキョンに自身の正体と涼宮ハルヒという少女の特異性について語る場面は純粋にわくわくした。
非日常を切望する少女こそが周囲を非日常たらしめている根源で、そのことに本人は何も気づいてはいないなんて!
その気になればインターネットで色んな情報を手繰ることのできるこのご時世に、こうして新鮮な気持ちで過去の有名作品を読むことができているのがすごく嬉しくて、楽しい。
今のところは、朝比奈みくるがとても気になっている。
何より「口には出せないけれど未来に関する重大な事情を知っている」という設定があまりにも好み過ぎる。
二十歳前後のみくるとキョンが会話をする場面なんか好きな要素しかない。
この先に待つであろう困難に、残された「白雪姫」というせめてものヒント。
そして、時間を経て繰り返される「禁則事項です」という合言葉みたいなやり取り。
確固とした時間の流れとそれでも変わらない部分が鮮明になるこのやり取りが好き。
何より作中でも書かれていた通り、二十歳前後のみくるにとって「久しぶり」の再会であったという表現から、なんだか切なげな未来をひとり勝手に想像してしまう。
そして今回の物語の幕引きについて。
涼宮ハルヒとふたり、閉じ込められてしまった閉鎖空間からヒントをもとに脱出する場面。
どうしてそれで閉鎖空間から抜け出せたのだろう、と読み終えた後、純粋に疑問を抱いたので私なりに思ったことを書いておきたい。
まず「白雪姫」「sleeping beauty」というヒントから、あんな思い切った行動に出るとは思ってなくて。
もし、本当に閉鎖世界が現実を見放した涼宮ハルヒによって作り出された新たな空間だとするならば、その一方で閉鎖空間から抜け出せたのはそこでのキョンの思い切った行動を彼女が否定したからで。
いきなりキスされた嫌悪感から、閉鎖空間での出来事を拒否したのかと思いきや。
「ポニーテールが似合っていた」という言葉を受けて短い髪をくくっているのに、私が今まで彼女に抱いていた想像以上に可愛らしい一面を見た。
現実よりはこの巨人の居る世界の方が面白そうだし、キョンのことは憎からず思っているけれど、こんな脈絡もない急転な結末はいやだと思ったということだと解釈していい???
涼宮ハルヒにとっては夢の中の出来事なのにちゃんと髪をくくるの、とてもいじらしいし、それを踏まえた上での「似合ってるぞ」のひと言も素敵。
最後の最後で、単に「パワフルな少女とそれに振り回される少年」という関係性だけでなく、新たな一面を見てキャラクターとしてふたりの組み合わせがとても好きになってしまった。
そして角川文庫版で新たに追加された解説は筒井康隆。
『涼宮ハルヒの消失』の評価が軒並み高いらしいと知って、今から読むのが楽しみ。
というかもう「消失」って単語だけで想像が広がる。
今回明かされることのなかったキョンの本名やあだ名の由来も後々重要になるに違いない、とよく外れる私の勘も言っているので、それも含めてこの先の展開を楽しみにしている。
それから余談にはなるけれど、『ビアンカ・オーバースタディ』の話が出てきて、小説の新人賞で勝手に続編が書かれたという面白エピソードを思い出して頬が緩んでしまった。
こちらも私の記憶が正しければ過去に買って積みっぱなしなので、とりあえず涼宮ハルヒシリーズを読み終えた暁には読んでみたいと思っている。
次作『涼宮ハルヒの溜息』の感想はこちら。