いつかブログを更新しようと思い続けたままずるずると年末が来てしまった。
変わらず本は読み続ける一年だったので、いくつかブログで感想を書いたものもあればそうでないものもあるけれど今年の総括として今年のお気に入りの小説をまとめておきたい。
あまりにも悩みに悩んだので明日になったら違う10冊を選ぶのかもしれないけれど、その頃にはもう2018年は終わってしまっているので正真正銘この10冊が「2018年の10冊」。
『ひとりぼっちのソユーズ』 七瀬夏扉
ひとりぼっちのソユーズ 君と月と恋、ときどき猫のお話 (富士見L文庫)
- 作者: 七瀬夏扉,吉田健一
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2017/12/15
- メディア: 文庫
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ボーイミーツガール×SFという完璧に私の好みのど真ん中を射抜いた作品。
漠然と抱いていた夢やあこがれがいつの間にか自分のものだけではなくなって、もどかしさや焦燥感を抱きながらも前に進もうとする様が本当に好き。
大人に近づくにつれ、純粋なあこがれだけで夢を語ることは難しくなっていくけれど、それでも気持ちを手放さない。
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』 暁佳奈
アニメ化もされたこの作品。
かつては人を殺すためだけの機械として戦場を駆け回っていた主人公が、大切な人から人へのの言葉を預かり届ける仕事を通して、自身もまた迷いながらも人間らしい心の機微を取り戻してゆく。
登場人物たちのまなざしも本当にあたたかくて、それだけで胸がいっぱいになる。
『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』 浅原ナオト
なんとなくタイトルからライトなラブコメかと思って手に取ったら、思い切り横っ面を叩かれた作品。
「普通になりたい」と切望する主人公の少年の言動が深々と心に刺さっている。
彼から見れば十分「普通」であるはずの私が、どんな言葉をかければ彼に寄り添うことができるだろうか、そう思うことすらおこがましいような気がして。
『マレ・サカチのたったひとつの贈物』 王城夕紀
自分の意思とは関係なく、不意にどこかへ瞬間移動をしてしまう少女の物語。
世界各地を転々と移動しながら次第に大きな出来事に巻き込まれ、選択を迫られるのですが、そこでの彼女の選び取った現実と言い放った言葉がとてもまぶしい。
どこか淡々としていて静謐な筆致で描かれながらも、彼女がいろんな場所で出会った人たちと言葉を交わして得たものは芯の通った揺るぎないものとして深く私の心に残っている。
これは読んだ人にしか伝わらないだろうけど、靴屋の老夫婦との出会いが特に一番すき。
『あの日から君と、クラゲの骨を探している。』 古矢永塔子
不良少年が幽霊少女に恋をする――そんなあらすじだけを読んで「ありきたりな小説」だと思わずに読んでもらいたい。
同じようなことを感想記事で書いた記憶があるけれど、綺麗な結末に向かうための登場人物じゃなくて彼らなりに思い悩んで言葉を選んでいく様が、本当に血の通っているように感じて。
元々クラゲが好きではあったけれど、それ以上にタイトルにある「クラゲの骨」という言葉の持つ意味がこんなにも私の中で素敵に響くとは思ってもいなくて、今でもこの物語の2人の行く末がよりよいものであるように願っている。
『おやすみ、東京』 吉田篤弘
深夜の東京を舞台に、ちょっとだけ変わった人たちの営みを描く群像劇。
劇的な何かが起こるわけではないけれど、途中から登場人物たちの思いが交差して確かに少しずつ物語が好転してゆく気配を感じ取ることができて、ただひたすらにそれが心地良かった。
ここに書かれている物語は「フィクション」ではあるけれど、ささやかな喜びを胸に暮らしていくって多分こういうことなのだ、と感じた小説だった。
今の私が思い描く理想のくらしのイメージのひとつ。
『ペンギンは空を見上げる』 八重野統摩
これまた、少年と少女の出会い×宇宙をテーマにした作品。
正直な話、幼い言動から主人公の男の子のことをあまり好きになれなくて、もやもやとした気持ちを抱えながら読んでいたのだけれど、最後の最後には驚きとともに彼の努力も挫折も何もかも綺麗に昇華されてゆく。
私が抱えていたもやもやの所在もはっきりして、彼の純粋さとひたむきさを知り、たまらなく愛おしくなった。
神様はペンギンから空を奪ったりしない。
この一節が私以外の誰かにも同じように素敵に響きますように。
『君の話』 三秋縋
作られた架空の思い出の中にしか存在しないはずの君と出会って、世界を彩る色がこんなにも綺麗だということを知ってしまった。
非現実的なほどに幸せな夢を悪夢だと語っていたのが、印象に残っている場面のひとつ。
出会わなければよかったという思いと出会えてよかったという思いは、十分に共存し得るもので、痛みを伴っても揺るぎなく相手のことを思って嘘を吐く。
あくまでも自分がそうしたいからと言い聞かせるように吐く嘘は、言い訳のようにも優しさのようにも私には映った。
『あなたはここで、息ができるの?』 竹宮ゆゆこ
染み入るような小説やわくわくするような小説がある中、今年いちばん大きく心を揺さぶられた作品。
死を目の前にして青春を何度も繰り返す女子大生の物語。
彼女のパワフルな語り口に呑み込まれるように右も左も分からないままに読み進めて、最後にとてつもなく壮大な物語だったのだと気がつく。
愛とかよく分からないけれど、この小説を読んで抱いた思いを愛と呼んでもいい気はしている。
『私はあなたの瞳の林檎』 舞城王太郎
恋愛を描いた3編の独立した物語。
特に表題作がいちばんのお気に入り。
恋に恋するという表現があるみたいに、自分がどうしたいのか分からないまま輪郭のぼやけたままだった感情が、突飛な出来事を経て、自分にとっての恋がどういうものなのか自覚していく過程がとても私好みだった。
好きな人のことを消費したくないだとか、ただ甘やかされていたくないだとか、そういう表現で恋が描かれていて、微笑ましいやら気恥ずかしいやらで思わず口元が緩んでしまった。
思いのほか単行本が多く含まれるという結果になりましたが、以上、今年の私の10冊でした。