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『田嶋春にはなりたくない』

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『田嶋春にはなりたくない』 白河三兎

田嶋春にはなりたくない (新潮文庫nex)

 

 

今の私の愛して止まない作家のひとり、白河三兎。

今回の作品は奇抜なキャラクターを中心にめぐる日常の謎ミステリ。

決して自分を曲げない田嶋春に、いい意味で振り回されっぱなしだった一冊。

 

 

あらすじ

どんな小さな不正も見逃さず、そのすべてを真っ直ぐに指摘し、正そうとする大学生の田嶋春。

その性格から「空気が読めない」と周囲の人間から疎まれがちな彼女。

そんな彼女の振る舞いに翻弄されながらも、決して真実を見失わない観察眼と公正公平な優しさに気がつけば感心させられている。

キャンパスライフを巡る日常の謎とその謎に隠された他人には知られたくない打算的で仄暗い気持ちを解き明かす連作短編集。

 

 

 

文庫本あらすじの

友達にはなりたくない だけど彼女を見ていたい

っていう一節、あまりにも田嶋春という人間に対して失礼なのに、私が彼女に抱く印象はまさにその通りで思わず笑ってしまう。

田嶋春を取り巻く人たちの目線で物語は進んでいくのだけれど、誰も彼も彼女に対して「関わるとめんどくさいから近づかないでおこう」というような第一印象を抱いている。

そして物語が進み日常の謎が彼女の手で明かされていくのを見ているうちに、いかに穿った見方で彼女を見ていたのかと気付かされる。

田嶋春自身は何も話の前後で一貫して変わっていない。変わるはずもない。

 

タイトルにある通り、田嶋春にはなりたくないけれど、それでも彼女の優しさや正義に燃える心をむしろ好意的に受け入れたい。

この、決して最初に抱いたマイナス感情が消えることはないけれど、そのどれもが「納得のいく許せる」ものに変わっていく感覚がとても不思議な体験だった。

田嶋春なら仕方がないか、という風に。いつの間にか愛着がわいた、とも言えるかもしれない。

 

 

 

五つの物語の中で、読後感はもちろん、日常の謎としても田嶋春の懐の広さが分かるという意味でも、『スケープゴート・キャンパス』がいちばん好き。

多分、田嶋春の憎めないところって、本当に首尾一貫して態度が変わらないし、他人のコンプレックスさえも何でもないみたいに受け入れてしまうところだと思う。

人間ができすぎていて、逆に集団生活には向いてなさすぎる。

そうして見ると、どのお話の主人公もそれぞれがコンプレックスを抱いていて、それをひた隠して生きていこうとしている中、田嶋春が見事に謎とともにコンプレックスを打ち砕いていく。

そういう意味で『スケープゴート・キャンパス』は特に、私にとって作中の人物が抱いているコンプレックスが身近で、それが昇華されていく様子が本当に爽快で心地よく感じた。

 

それからどの話も、田嶋春が無自覚に他人を救っていくのがとても痛快だった。

彼女にとって他人を思いやるのは当然で、息をするように困った人に救いの手を差し伸べる。

一周回ってそれはもはや「優しさ」ではない何かなのではないかと思えるくらいに。

 頭の中では分かっているこうあるべき理想の行動を、地で何でもないように行うのがとても気分よく感じるのかもしれない。

 

 

 

最後に余談にはなるけれど、現実にいたら絶対めんどくさいし、近づかないとは思うけど、人間としては凄く尊敬するし見習いたいしなんなら好きだよっていうの、なんとなく伊坂幸太郎『砂漠』の西嶋みたいだって思った。田嶋も西嶋も同じ「嶋」だし。

 

砂漠 (新潮文庫)

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