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『朝比奈うさぎの謎解き錬愛術』

『朝比奈うさぎの謎解き錬愛術』 征木政宗

朝比奈うさぎの謎解き錬愛術 (新潮文庫)

 

 

 

あらすじ

鳴かず飛ばずの探偵業を営む主人公の迅人。

自称の「もたれ体質」によって、何かと殺人現場に居合わせては疑いをもたれてしまう。

そんな迅人の窮地を救うのは、ストーカーとして彼を悩ます朝比奈うさぎ。

知らぬ間に自室に忍び込み勝手に朝食の支度を始める程の驚異的な執着心と些細な行動から「迅人は自身のことが好きなのだ」と決めつける思い込みの強さが、時に殺人事件の謎を解き明かす。

彼女の推理が花開く合言葉は、「迅人さん、うさぎのこと大好きなんですね」。

ストーカー美少女が迅人からの愛を証明する過程で「ついでに」真犯人まで突き止めてしまう、ラブコメ本格ミステリ

 

 

 

雰囲気はコミカルでさくさく読み進められるのに、きっちりミステリしててすごく面白かった。

あまりにも普通に殺人現場でもラブコメするので、大丈夫??? 疑いかけられててこのままだと犯人扱いなんだけど? というか普通に目の前で人が死んでんだけどって思って普通に笑ってしまう。

 

迅人に一途のうさぎがめちゃくちゃ可愛い。完全に他人事っていうのもあるけど、うさぎの猛アタックに苦い顔を浮かべる迅人に対して、いいじゃん一緒になっちゃいなよって思う。

 

 

そして何より「迅人はうさぎのことが好きだ」ということを迅人の行動からうさぎが証明する過程で真犯人が分かってしまう、それにちゃんと論理的な推理の上で成り立っているというのが新感覚でとても面白かった。

うさぎの態度も徹底していて、真犯人よりも好意を証明するのが大事で真犯人が分かっても滔々と話し続ける姿に、いつしか私も「いい! そのまま続けて!!」と楽しい気分になる。この愛の証明もたくましい思い込みの上ではあるけれど、きっちり論理的に行われるので読んでいてとても小気味いい。

 

連作短編集という形ではあるものの、最後の最後で今までのお話がすべて繋がるほどきっちり作りこまれていて、本当に読んでいて楽しい物語だった。

特に迅人とうさぎの帽子にまつわるやり取りには、うさぎの記憶力と妄想力に思わず舌を巻いてしまう。いや確かに頭のを取ったらそうなるけども!

うさぎ以上に迅人のことを愛せる人は、この世界にはうさぎの他に誰もいない。

これだけは間違いない。

 

そしてあまりにもポジティブにうさぎが「迅人がうさぎのことが好きなのだ」と言い張るものだから、物語が進むにつれて、最初はストーカーである彼女に厳しい態度をとっていた迅人が次第に軟化して、うさぎの言動に心乱されていく様にふふっと笑ってしまう。

うさぎによる半ば洗脳なのか、愛のなせる業なのか。

 

 

純粋にエンタメとしてめちゃくちゃ面白かったので、是非とも作品をシリーズ化していただいて、うさぎの天真爛漫に愛を語る姿と彼らの関係性の行く末をずっと見守りたいくらいお気に入りの一冊。