ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『少年と少女と、 サクラダリセット6』

『少年と少女と、 サクラダリセット6』 河野裕

少年と少女と、 サクラダリセット6<サクラダリセット(新装版/角川文庫)>

 

 

新装版サクラダリセットシリーズ6作目。

シリーズ作品も残すところあと7巻を残すのみ、というところまで来るといよいよ大詰め、という気がしてきます。

今回の物語は最後の締めを迎えるための準備のようなお話、いわば前半。

過去に1度スニーカー文庫で読んでいるのものの、本棚から引っ張り出して読んでしまいそうなくらい.早く続きが読みたい.....。

 

 

これまでのお話やその他の河野裕さんの作品についての感想はこちら↓

河野裕 カテゴリーの記事一覧 - ゆうべによんだ。

 

 

※以下、だらだらと感想が続きます。内容に触れることもあるかと思いますので、未読の方はご注意ください。

 

 

色々と触れておきたいことがあるのですが......まずは。

わかりきってることでいちいち足を止めるから、進み出せなくなるんだ。

p.35

序盤に登場するこのフレーズ。初めてスニーカー文庫版を読んだ時に印象に残っている言葉のひとつです。そういう言葉が他にもいくつかあって、そういうものに出会う度に嬉し懐かしい気分になります。

 

それから。

一〇〇通りの言葉を考えて、一〇〇回、なにかが違うと思った。

あらゆる言葉が、なんだか場違いだ。

p.53

 という場面。『いなくなれ、群青』の七草も似ていたこと言ってたな、とふと思う。

百万通りの喜びを喜びと言う言葉で表して、百万通りの悲しみを悲しみという言葉で表して、どんな意味があるというのだろう? 

『いなくなれ、群青』

河野さんの作品をこうして1周ぐるり、とまわって、こういう言葉にできない感情をどうにか言葉に落とし込もうとすることの意味を考えるのがすきなのだ、と改めて自覚する。

それでも言葉で伝える方法しか知らなくて、適切な言葉をいつだって探している。

 

 

 

続いて、相麻菫。

やっぱり彼女がたまらなく好きだ。というよりあまりにも不器用で放っておけない。

彼女が2年前に死んでしまった意味をケイも知ることになるのですが、能力によって「蘇った」菫が不憫でならない。

死んでしまった理由をひた隠しにし続けていたのは、ケイと春埼とのまるで能力なんて関係ない普通の高校生みたいに幸せな時間を守りたかったから。

そう決めたのは死んでしまった菫なのに、蘇った菫も別人であるとは言え菫に他ならないので信条を曲げることなんてできない。そうしてすべてを丸投げにして、ケイのためだなんて都合のいい言葉に濁して死んでしまった菫が許せない、という。

ケイと菫の間に交わされる言葉は、ほとんどが信頼によって成り立っている。他の誰でもない、ケイの、そして菫の言葉だから素直に受け入れ従おうと思える。

「ずっと、貴方の幸せだけを、祈っているわ」

自分の名前を知らない彼女は、そう言った。

p.312

 この台詞に色々なものがぎゅっと詰まっていて、ほんとうにたまらない。

 

 

 

今回は、最終巻に向けての山場、ということもあって結末は考え得る限りでは絶望的だ。

浦地だって完全な悪、というわけではない。

能力をすべて消し去る、という方法でしか世界を愛せないのだ。

1代目魔女がケイ達に問いていた「石ころでも愛せるか」という質問も、ちゃんと物語があったことを、今になって知ることができる。

多分、浦地には言葉が足りなかったのだと思う。

回りくどくても無駄でも言葉をかけたりかけられたりするような時間や相手が。

 

 

 

そうして、最後の「――伝言が好きなの。」の回想にも思わず泣いてしまいそうになる。

 

 

 

最終巻の発売が本当に楽しみ。