『マツリカ・マハリタ』 相沢沙呼
相沢沙呼さんの「マツリカ」シリーズ2作目。
こちらから読んでも話の大筋の内容は理解できると思いますが、前作のことを踏まえた描写がいくつか登場するので、1作目にあたる『マツリカ・マジョルカ』から読むことをお勧めします。
『マツリカ・マジョルカ』の感想はこちら。
相沢沙呼さんと言えば、
今回の『マツリカ・マハリタ』の帯でも触れられていたのですが、『小説の神様』の反響がものすごいようで。
Twitterを眺めていて見つけた情報によれば、つい先日第5刷にあたる特大重版がかかったとか。
『小説の神様』は決して楽しいだけの小説ではなく、どちらかと言えば苦しさが胸に差すような小説なのですが、それでもこうして大勢の人に受け入れられている、というのがなんだか自分のことのように嬉しいです。
『小説の神様』だけでなく、相沢沙呼さんの作品はどこか影を負ったような、苦しさや寂しさが繊細に描かれている、というのが私が抱いている印象のひとつなのですが、この「マツリカ」シリーズも例外ではなくて。
クラスに馴染めず、朗らかに笑いあうような生活に馴染めず、ひとり孤独を感じてしまっている主人公の男子高校生、柴山祐希。
学校の向かいの廃墟ビルに住んでいる妖美な雰囲気を放つ謎の多い美少女マツリカに命じられ、学校にまつわる階段の調査を行っている。
今回、柴山くんは高校2年生になり、新たに出会った生徒や写真部の面々と過去に飛び降り自殺をしたという少女の霊にまつわる噂を追いかけることになる。
彼らが直面する謎には誰かの言葉にならない叫びが込められていて、真相が明らかになる度に寂寥感が募る。
静謐な夜や何もかも白々とした明け方がよく似合うような。
自分の居場所ではないな、と思いつつも柴山くんは同級生のパワフルさに引っ張られるようにして写真部の面々と過ごす時間が増えるうちに、まんざらでもないな、という思いが生まれる。
なんだよ、それ。
僕が聞きたいのは、そういう話じゃない。そういう話じゃないんだ。
だって、そんな話をされたら、その優しさが、本物だって分かってしまう。
p.73
この柴山くんの独白が特に印象に残っている。
きっと柴山くんは日頃から落としどころ、言い訳を探すのが癖にになってしまっている。
傷つきたくなくて、自分が何でもない存在だなんてまざまざと見せつけられるのが嫌で、自分から距離を取ってしまう。
それでも、混じりけのない優しさを振りかざされてしまったら突き放しようがない。
こういう「寂しさ」がたまらなくすきです。
ちょっとした疎外感だったり、諦観だったりが本当に私の感覚にぴったりと合う。
ふとした瞬間に自分の存在を客観的に、低めに査定してしまう感じ。
だからこそ、柴山くんや登場人物たちが自身の言葉で欲求を、望みを語る場面に出くわす度に、その言葉が私の中で大きく響いてその余韻がいつまでも残る。
......それから。
前作以上に言葉の限りを尽くして、あらゆる比喩を用いてふとももの魅力について表現されていて、一周回って吹き出しそうになるくらい生き生きする語り手である柴山くん。
マツリカさんに翻弄される様子はまさに、マツリカさん自身が言うように、完全に犬......。
でも、いくらなんでもロッカーの中に1時間こもる命令を受け入れるのは流石に上級者過ぎるよ、柴山くん......。
周りの友人に恵まれていて柴、山くんの孤独な面に関しては全然心配していないのですが、違った意味で将来が心配である。