『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん』 友井羊
ごはん小説って、なんかずるいと思うのです。
「しずく」はランチ・ディナーを主軸に営業しているんですが、朝ごはんに関しては宣伝を一切行わずにこっそり営業しているスープ屋さん。
店主の麻野さんと朝ごはんを食べにくるお客さんとのやり取りを中心に話が進んでいくのだけれど、スープの描写がとにかくずるい。
文章読んでるだけで、スープの食材のイメージが口の中でほわっとして、おなかが空くというより、本当においしいスープの入ったカップを両手で握りしめたくなる。
すぐ小説に感化されてしまう部分があるので、今回も読んだ後にスープつくってみたい欲がふつふつ。
普段から自炊に関しては手を抜きがちで、何かに感化された時に思いついたようにしか料理しないのですが、小説の中に出てきたスープつくってみたい! と。
中でもクラムチャウダーの話がお気に入りで、話の中に出てくるロードアイランド風のスープが透明のクラムチャウダーをつくってみたいなー、と思っています。
クリームのクラムチャウダーが一般的で、トマトベースのものもある、というのは知っていたのですが、すまし汁のような透明なクラムチャウダーはみたことも食べたこともなくて。
ただ簡単にレシピ検索したところ、透明のクラムチャウダーはなかなか過程で食べられていないのか、英語で書かれたレシピしか見つからなくて。
もともとアメリカの方でできた料理みたいなので、なんとなく英語で書かれたレシピの方が本場っぽい! と思って一応ブックマークをしておいたのですが。
サボらずにつくることができたら、また報告したいと思いますー。
脱線してしまったので、本の話に戻ります。
幸福感の基準って人それぞれだと思うけれど、朝ごはんの時間を誰かと共有することができて目の前には食材を生かしたあたたかいスープがあるというのは、十分しあわせだと思うのです。
宝島社文庫のこのミス大賞シリーズとして刊行されているのですが、個人的にはミステリーとしての驚き云々よりも、スープが人の心も関係性もその場の雰囲気もあたたかくやわらかくしていく感じがすごくすき。
(“ミステリー”の表記があるだけで、周りの評価がミステリーとしての評価に寄ってしまうのはあまり面白くないと思っているのはまた別のはなし)
この作品が好きな人はぜひ、大沼紀子さんの『真夜中のパン屋さん』シリーズも読んでみてほしいです。お店や登場人物、話全体の雰囲気が何となく似ていると思うのです。