『ギルドレ 1 有罪のコドモたち』 朝霧カフカ
『文豪ストレイドッグス』の原作者、朝霧カフカさんによる王道SF冒険譚。
単行本として刊行された当初から読みたい読みたいと思っていたら、いつの間にか文庫化していた。
※一部ネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
あらすじ
正体不明の敵からの攻撃による人類滅亡の危機を救ったと噂されるひとりの少年。
死屍累々の戦場の中、身ひとつで世界を救った彼はその後姿をくらませてしまう。
窮地は脱したものの、未だ敵との競り合いが続いて3年後。
突如現れた記憶喪失の少年、神代カイルの身に人知を超えた能力が発現する。
彼こそがかつて人類を救った救世主なのか。
今、世界の行く末が有罪の子供――ギルティチルドレンの手に委ねられようとしている。
王道の展開がひたすらに心地いい
窮地に至って能力が発現する展開は去ることながら、不思議な能力ゆえ異端扱いされている主人公の今後の快進撃の片鱗が1巻にして既に見えているのが本当にワクワクする。
ただひたすらに格好良さに打ちひしがれたのは、カイルが能力の証明のために「白を出せ」という大佐に対し、リバーシの石を放り上げる場面。
人生で一度はやってみたいものだ......。
戦闘シーンも、カイル自身は非力ながら能力を以って彼を最強たらしめているというアンバランスさがとてもツボ。
敵の攻撃が一度でも直撃しようものなら、カイルにとって致命傷になってしまうのに彼は身ひとつで敵と対峙する。
理由は至ってシンプル。
目の前の敵の攻撃など当たりようがないから。
この能力を主人公に据えてしまってこの先大丈夫? もうこの先敵なしなんじゃないの? って心配になるくらい。
それから出自不明で都市の日常を脅かすかもしれない不審人物扱いされていたカイルが、計らいによって無事学園に入学した後に彼の前に現れた夜見原というキャラクター。
カイルたちに対する挑発的な態度から、火ぶたが切られたランキングを巡る戦い。
未来を視て掴み取るというカイルの能力を持ち合わせていない私でも、普通に競えばカイルたちが勝つのは目に見えていて、もはや気付いたら夜見原くんが”かませ”キャラになってしまうのではないかとその後を憂いている。
答え合わせは次巻以降。
世界を救う能力――量子力学と多世界解釈
正直、量子力学をモチーフにしたという主人公の特殊能力だけで易々と私の心を撃ち抜く魅力がある。
シュレディンガーの猫という言葉はあまりにも有名だけれど、それこそ二重スリットの実験とかシンプルなのに量子力学の不思議がぎゅっと詰まっていて、とても想像が膨らむ。
数多に存在し得る未来の中から自分の意志で選び取るというカイルの能力も、必ずしも万能ではないことが黛先生との実験で明かされて、カイルが「観測者」である必要があるという要素が今後物語にどのように生かされていくのかとても楽しみ。
少なくとも今のところは万能に見えるのだけれど。
単行本刊行当時に参考文献として挙げられていた量子力学にまつわる本というのがいくつかあって。
いつかゆっくり時間をかけてここら辺の本も読んでみたい、と思ってはいる。
特に量子力学の本。
小説を入り口に、普通だったら敬遠しがちな「むずかしそう」な本にも手が伸びるのも、読書の楽しみのひとつだと私は思っている。
【2階文庫】本日、朝霧カフカ先生最新作の『ギルドレ2 滅亡都市』が発売!当店ではエレベーター前で大展開!!2巻、登場キャラが躍動!激熱です!特に今回表紙の彼!ちなみにつながる表紙、あざといですがかっこいいと言うしか!(続く) pic.twitter.com/yYFqvBgPXp
— 紀伊國屋書店 新宿本店 (@KinoShinjuku) February 21, 2017
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量子力学をモチーフにした小説と言えば『マレ・サカチのたったひとつの贈物』がめちゃくちゃ好きなので、良かったらみてみて。