『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 13』 大森藤ノ
※以下にネタバレを含んでいます。未読の方はご注意ください。
「ダンまち」シリーズ13作目。
とにもかくにも手に汗握る展開とベルくんのかつてないピンチにどきどきしっぱなしの今回。
前回、12巻の最後に仄めかされた【疾風】ことリューさんが犯人と思しき殺人から始まる物語。
ここまで読んできてリューさんの過去にはとある人たちとの深い深い因縁があるということは知っていましたが、果たして復讐心に駆られてリューさんが本当に手を下したのだろうかという不安。
そして、予知夢として未来を占うことのできるカサンドラが告げるヘスティアファミリアの面々の死。
このカサンドラの未来を視る力というのも、今まで何度か、どちらかと言えばコミカルタッチに触れられてきましたが、今回はどうやら冗談では済まされそうにない雰囲気に、これまたかつてない受難のよそおい。
まずはリューと殺人疑惑について。
ベルくん同様、いくら過去の因縁があると言えここまで苛烈なことに及ぶことはないと信じていましたが、懸けられた賞金目当てに討伐隊が組まれてしまう展開にはきな臭いものを感じながらも、流石にひやひやとしました。
復讐が復讐を呼ぶ、憎しみの果てにすべては仕組まれた罠だったのですが、この討伐隊が組まれたというのはほんの些細なことに過ぎず、リューさんを目の敵にする首謀者の真意というのがまたとてつもなくて。
この首謀者やモンスターと対峙するにあたり、リューさんの頑なな決意と過去に対する贖罪が見え隠れして、「救い」を求めて思い悩む姿に早く晴れやかに微笑む彼女の顔が見たいと願ってしまう。
もちろん彼女自身の問題ではあるものの、今までそうしてきたようにそんな憂鬱は吹き飛ばしてくれよ、とベルくんに過度の期待を寄せてしまう。
このリューさんにまつわる一連の問題は、あとがきによれば今回と14巻に渡って描かれるようなので、彼女がどのような決意を胸に抱くのかとても次巻が待ち遠しい。
そしてカサンドラの予言と厄災との対峙。
繰り返される破壊に抗う術として、ダンジョンによって生み出された規格外の力と速度をもったジャガーノート。息つく間もなく冒険者たちの命を刈り取り続ける。
ヤスダスズヒトさんの挿絵も相まって、本当に、本当に今までにないくらいに読んでいて感情の起伏が激しくなってしまう戦いでした。
ナイフを握るベルくんの腕が肩から千切れ、宙を舞う場面では思わず「うそでしょ」と。
今まで熱戦を繰り広げながらもなんだかんだ言ってベルくんが勝つんでしょ? と心のどこかでは高を括っていたのですが、紛れもなく右腕が失せ、圧倒的な力を前に死を覚悟し意識を手放すベルくんの姿に読んでいる私の心にも絶望が押し寄せる。
その後、マーメイドのマリィの血によって復活を遂げ、再びジャガーノートと対峙する場面では、安堵なのか興奮なのかもう胸がいっぱいに。
互いに一瞬のすきも許されない決死の戦いをするベルくんに自然と「たくましさ」と「かっこよさ」を感じる。
気がつけばいつからか、ベルくんは真正面から強敵に向き合っていくし、決してあきらめたりしない。
先のリューさんの件でベルくんに期待を抱いたように、いつの間にか私の中ではすっかりヒーローだ。
そんな修羅場の連続で、13巻の終わりにベルくんの前に無情にも広がるのは深層37階層。
あとがきによればこの後もまだまだピンチが続くとか。
ここからどうにか救われるビジョンがまったくと言っていいほど見えない。どうしよう。
人語を操るモンスター、異端児たちが手助けしようにも、リリがヘスティア様に送った手紙によって救援隊が派遣されるにしても、快刀乱麻に解決できるほどやさしい状況ではない.......。
ここまで感想で一切触れてこなかったけれど、ピンチなのはベルくんだけでなく、別行動していた他のヘスティアファミリアの面々。
彼らの前には、「まだ」現れないはずの階層主の姿。
本当にこれ、大丈夫????
みんな助かるって信じていい???
早く14巻でみんなが笑いあう姿が見たい。