ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『あやかし夫婦は、もう一度恋をする。』

『あやかし夫婦は、もう一度恋をする。』 友麻碧

浅草鬼嫁日記 三 あやかし夫婦は、もう一度恋をする。 (富士見L文庫)

 

かつて大江山周辺を牛耳っていた酒呑童子茨木童子としての前世の記憶を持つ高校生の物語、浅草鬼嫁日記シリーズ3作目。

 

あらすじ

茨木童子を前世とする真紀と酒呑童子を前世とする馨の前に教師として現れたのは、安倍晴明の生まれ変わりである叶冬夜。

叶が告げるには、真紀たちは互いに前世に関して重大な嘘をついているという。

そんな叶の言葉に今まで仲睦まじく生活を送っていた真紀と馨、そして同じく元あやかしの継見由理彦の関係がぎくしゃくとし始めてしまう。

関係性が改善されないまま、彼らにとっては因縁の地であり古郷でもある京都へ修学旅行に行くことになり、そこで出会ったあやかしが告げる事実に翻弄されながらも、彼らは「嘘」の向こうに何を見出すのか。

 

 

 

※以下、ネタバレ含みます。未読の方はご注意ください。

 

 

 

ここから始まる恋物語

馨についた嘘に対する後ろめたさからひとり小路に追い詰められてゆく真紀。

そんなひとり思い悩む真紀の姿を、すれ違うふたりの様子を、ちょっと見ていられないなと思いつつも、きっと馨なら受け止めてくれるに違いないと信じてページを捲る。

 

回想として語られた、大江山が攻め落とされ酒呑童子が首を落とすに至る場面。

結果は分かっていながらも、現代に生まれ変わって平穏に暮らしていると知りながらも、当時の茨姫の深い絶望と復讐心を思うと胸がいっぱいになってしまった。

 

京都にて心身ともに追い詰められた真紀の前に馨が現れるというのは、この物語を読みながら信じていた結末のひとつで、だからこそ、本を持つ手に入る力をふっと緩めてしまうほどにあたたかに安心する気持ちがあって。

今まで現世でも同じく長い時を過ごしながらも、前世のことを思い出した上で馨が真紀を「迎えにいく」ことで初めて馨にとって約束が果たされたという律義さと、それに対する真紀のまなざしが柔らかさに、これこそ私の求めていた、あるいはそれ以上の大団円だと物語の中の彼らの幸せを祈らずにはいられなかった。それと同時に、あんな風にぎくしゃくするふたりはできることならば見たくはないな、とも。

どんな困難も乗り越えられると分かっていながらも、やっぱりふたりにはいつまでも幸せそうに軽口をたたき合っていてほしい。

 

 

 

継見由理彦の抱える嘘

幽遊白書』で蔵馬がすきなのと同じ理由で由理がすきで、いつもは落ち着いて朗らかな表情なのに、ここぞという場面ではすっと言葉の温度が下がる感じがたまらない......。

 

真紀の嘘も馨はしっかりと受け止め、大団円と思われた場面での由理のモノローグ。

なら、僕は?

僕の嘘は、いったい誰が受け止めてくれると言うのだろう。

 これ、普段穏やかでにこにこしているキャラクターに限って、拗らせたときにはとてつもなく深刻になるやつだ!!!

 

多分次巻、この嘘について明かされることになると思うのですが、彼が何のためについた嘘で、そして何に対して今も後ろめたく思っているのか、非情に気になる。

小さな嘘だったら「それは必要な方便だったんだ」とこともなげに言ってのけそうなだけに、そして真紀と馨のためなら躊躇いなく身を投げてしまいそうなだけに、今から不安な気持ちでいっぱい。

 

 

 

おお、愛しの傘 川獺 ( かわうそ )

最後にもう少しだけ、話をさせてほしい。

今巻、新たに私にとってのアイドルが爆誕する。

兼ねてから私の心をとらえて離さない、手鞠河童、「おもち」こと皇帝ペンギンのひなに化けたツキツグミへ向ける熱視線については過去巻の感想で書いているので、ここでは割愛させていただくとして。

 

そう、傘川獺である。

読んで字のごとく、小さな傘をかぶった川獺たち。

貢物として自分の大切にしていた綺麗な石や千代紙や砂糖菓子なんかをきらきらとした眼差しで差し出してくるなんて、愛らしいにも程があるって話ですよ。

 

そもそも居酒屋のメニューの端っこに獺祭の文字を見つける度に、川獺たちが額を寄せ合ってひしめき合う姿を浮かべてしまい、胸が締め付けられてたまらない私にとっては、傘川獺が自らの宝物を持ち寄って無邪気に集まる姿は額縁に収めたいレベルの光景。

おまけに傘を持ってふわふわと高所から降り立つんです、どう??? よくない???

 

本編は真紀がついた嘘をめぐって重苦しい空気が漂い始める中、手鞠河童を筆頭に愛くるしいキャラクターが登場する度につい頬が緩んでしまう。

既にあとがきにて手鞠河童は作者によってとてつもない後押しを受けていることが判明していて、おまけに今回表紙イラストでもなかなか目立つ場所を陣取っている。

これは、主人公がゆくゆくは手鞠河童になるという重大な伏線かもしれない......どうしよう......とてつもなく重大なことに気が付いてしまったかもしれない......。

 

 

 

 

ここまでのお話の感想はこちら。

 

shiyunn.hatenablog.com