『少年Nの長い長い旅 03』 石川宏千花
同級生とともに異世界へ飛ばされてしまった少年、野依が右も左も分からない世界で散り散りになったかつてのクラスメイトを探す冒険ファンタジー。
そして、『少年Nのいない世界』(講談社タイガ)に至るまでの物語。
以下、これまでのお話、『少年Nのいない世界』のお話を踏まえた上の感想です。
未読の方はご注意ください。
野依と戻れない日常
前回まで異世界に飛ばされ、かつての世界とは違う常識に振り回される野依くんの姿が描かれていたのですが、今回で2年の時が経ち、そこにはお世話になってる運送業者の業務にすっかり慣れた野依くんの姿が。
今の忙しなく仕事をこなしながら音色たちを探す生活とかつての生活、どちらが野依くんにとって「戻る」というにふさわしい日常なのか考えるとちょっと胸がいたむ。
それからふとしたことをきっかけに、もしこの異世界に飛ばされていなかったら17歳の自分は何をしているのだろう、アルバイトをして仲間たちとスノーボードに行ったりしたのかもな、と想像する場面。
もう、この場面が本当にたまらなく胸に迫るものがあって、読みながら思わず長い息を吐いてしまったほど。
野依くん、その頃にはおそらく「いない」ことになってるんだよ、だってこの未来を描いた物語のタイトルが『少年Nのいない世界』って......。
野依くんの性格的に、英雄的自己犠牲をしそうで毎度どきどきしてしまう。心休まる気がしない。気になるからちゃんと読みますけど。物語の手玉に取られた私。
......いや、もしや将来的に野依くんだけ「現実世界」に戻っているパターンもあるのでは?? それがしあわせかはさておき。
野依が出会うかつての同級生
一緒に異世界に飛ばされてきた音色に続き、2人目の同級生と今回野依くんは出会うのですが、これがまた考えが読めないのなんのって。
よくよく考えてみればシリーズ通して、こちらの世界での様子が語られるのは初めてなのですが、この先、敵として立ちはだかるのか、分かり合うことができるのか。
野依くんが誘拐され、その誘拐された先には同じように子どもが集められていた。
この子どもが集められた組織の意図も気になるし、今後どのように関わってくるのかも気になる。
このシリーズ、読めば読むほどに爽快感どころか気になることが増えていくからつみぶかい。
サットの過去
トワコ曰く「おもしろおかしい出自」のサット。
もしかしてこの出自が関係して、サットは野依に協力的なのだろうかとか勘繰ってしまう、もしやサットも地球人なのでは? と。
(※こういう短絡的な私の勘繰りは十中八九外れる)
それからサットは、野依くんを拉致した団体となんらかの因縁がある様子。
後ろ暗いのか? もしかして、今回仄めかされたサットの過去って後ろ暗いのか???
このサットの過去を知るトワコなる人物も今後のキーパーソンになりそうな予感。
これほど伏線のようなものが散りばめられた上で、『いない世界』との直接的なつながりが見られないので、本当にどこまでこの物語は広がっていくのだろうという期待が膨らむ。と、同時に野依くんがこれからどうなってしまうのか、巻を追うごとに不安が大きくなってゆく。
お世辞抜きで、私の中で今後の展開が最も気になる物語。
以前までの感想。