一時期、タイトルも内容も分からない状態で店頭に並ぶ「文庫X」が話題になった。
もちろん私も「文庫X」はちゃっかり手に取ったし、書店でこういった本に関する限りなく情報を隠された覆面本、あるいはシークレットブックを見かける度に、わくわくしてつい財布のひもを緩めてしまう。
なんともずるい。
店頭でこういった催しに出くわす度にどきどきして心が張り裂けそうになる......。
私がそうやって本を手に取る時、きっと本そのものだけではなくて、そういったわくわくとした気持ちも一緒にレジに持っていくのです。
そういうわけで、私がただただシークレットブックに抱く思いを綴るだけの記事。
私の本棚のシークレットブックたちの話をきいて!
決して数は多くないけれど、これが私の本棚の一角で燦然と輝きを放つシークレットブックたち。
出会いも全部覚えていて、いちばん左からほんのまくらフェア、文庫X、かもめブックスで買ったシークレットブック、帯しか見えない文庫展、そして梟書茶房のシークレットブック。
ほんのまくらフェア
紀伊国屋の新宿本店で行われていた、本の書き出しのみ開示された状態で本を選ぶ「ほんのまくら」フェアは、私にとって衝撃的なものでした。
棚いっぱいに「書き出し」だけ抜き出されたカバーをかけられた本がずらりと並んでいて、ひとつひとつ手にとっては「どれにしようか」と悩んだのを今でも覚えている。
ほんのまくらフェアを受けて、こうした本の書き出しを集めたサイトも作られたけれど、私の中ではやっぱり実際に書店で目にしたときのわくわくには勝てない。
文庫X
言わずもがな、ひとりの書店員さんの熱い思いが綴られたカバーが目を引く覆面本。
さわや書店フェザン店から始まり、話題になるや否や全国の書店にも並ぶようになった。
行く先々の書店で文庫Xが展開されているのを見かける度に、ひとりの生の声がここまで波及力を持つのかと驚かされた。
ただでさえ内容を秘匿されているというだけで惹かれるのに、こんなに熱烈にプッシュされたらもう買うしかないよね、って。
書店員X - 「常識」に殺されない生き方 (中公新書ラクレ)
- 作者: 長江貴士
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/07/06
- メディア: 新書
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帯しか見えない文庫展
有隣堂が運営するカフェや雑貨コーナーが併設されたSTORY STORYで開催された帯しか見えない文庫展。
文字通り、帯しか見ることができない、フェア。
これに関しては、帯だけでも「あ、これはあの作品だ!」と思えるようなものが多くて、眺めているだけでも楽しかったです。
「ほんのまくら」フェアの時にも感じたことだけれど、少しだけ本に関して開示されていると、どんな物語がここから広がるのだろう、と想像が広がって仕方がない。
シークレットブックス(かもめブックス&梟書茶房)
校正、校閲の鷗来堂が始めた新刊書店かもめブックス。
そしてそのかもめブックスを手がけた柳下恭平さんが店内に並ぶおよそ3000冊を選書したブックカフェの梟書茶房。
どちらもちょっとしたその本にまつわる所感が添えてあり、それだけを参考に本を選ぶものでした。
これも、どれにしようかな、と色々目移りしてしまって、棚の前で随分右往左往してしまう。
特に後者の梟書茶房のシークレットブックスに関しては、同じ棚の中から次に読むべきオススメが提示されていて、ちょろい私はきっとこの先二度、三度と足を運んでしまいそう。
私の思うシークレットブックの魅力
まずは何に置いても、これは一体どんな本なのだろう、と目いっぱいに想像が膨らむところ。
実際に本を購入しなかったとしても、本棚の前をふらふらしてるだけで楽しい。
それから、時折「これはもしかしたらあの本かもしれない!」というものを見つけると、それだけでなんだか嬉しい気持ちになる。
そうやって隣の人がその本を手にするところを目にしただけで、「その本、すごくいいのでぜひ!」と手を取りたくなってしまう。
そして、こうしてシークレットブックという形でなかったならば決して手に取ることはなかっただろうな、という本に出合えるところ。
エンタメ小説ばかり好んで読む私で言えば、エッセイだったり、ノンフィクションだったり、句集やひと時代前の文豪作品など、普段なら書店の棚を注視することもない本たち。
一周回ってどこか読むことにハードルを感じてしまうような本たちに、わくわくとした気持ちをもって出会える、というのが私にとって本当に大きくて、シークレットブックを通して気にかけるようになった本がたくさんある。
少なくとも私はこうして手に取った作品に落胆したことはないし、どの読書体験も有意義なものでした。
ネット書店ではこれほどの臨場感は体験できないのだろうな、という思いもあって、「どんな内容なのか分からないものを数ある中から自分でひとつひとつ手に取って選んで買う」からこそその本に抱く愛着もあると感じています。
他にも気になっているけれど足を運べていない、シークレットブックフェアがいくつかあって。
例えば、三省堂書店のおみくじを引いてそこに記載されたものと対応する本を選ぶ「ほんおみくじ」。
ほんおみくじ企画『夏のよふかし』が名古屋本店にて、展開しています!テーマは『名作文学と遊ぶ夜』です。ぜひ、おみくじを引いて頂いて、名作文学に出会ってみて下さい!看板の女の子がメインデザインの缶バッチも発売中です。おみくじ引くのは無料です!名古屋本店だけでの展開です・・! pic.twitter.com/Bslllfl3yg
— MD販促三省堂書店 (@mdsale_sanseido) 2017年7月31日
それから、もしも文庫に........顔があったら? と、本の表情がカバーに手書きで丁寧に描かれている八戸市の木村書店での「文庫ちゃん」フェア。
表情がとてもキュートだし、何より愛を感じる......。
木村書店ではフェア「文庫ちゃん」を本日より開催しております!もしも文庫に顔があったら・・・書店員が丁寧に表紙を隠しました。その代わり文庫の表情と、中に書かれている一文を吹き出しに書いてみました!普段買わないジャンルとの運命の出会いがあるかも!?是非文庫ちゃん達に会いに来て下さい! pic.twitter.com/UXr6tovAxm
— 八戸市 木村書店 (@kimurasyotenn1) 2017年7月16日
偶然、Twitterで目にしただけでもこんなに素敵なフェアがあるのだから、きっと私の知らない心くすぐるフェアがまだまだあるはず......。
このブログの記事を綴るに、特に何かオチがあるわけでも、大々的に世間に訴えたい主張があるわけでもないけれど、ただただ私のすきなことを誰かに知ってもらいたかったのです。
そしてあわよくば、多くの人がシークレットブックの魅力に気が付いて、もっと書店でのこういった素敵な試みが増えて、大いに私を積読本で悩ませてほしい。