ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女』

『やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女』 皆藤黒助

やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女 (講談社タイガ)

 

私にとっては『ようするに、怪異ではない。』、通称よう怪シリーズでお馴染みの皆藤黒助さんの作品。

 

 

タイトルからも分かる通り、雨にまつわる言葉がふんだんに散りばめられた作品でした。

大筋は「よう怪」シリーズ同様、日常の謎にまつわるライトミステリ。

ご多分に漏れずちょっとした雨の関連する言葉を見聞きするのがすきな私にとって、次はどんな言葉が登場するのだろう、どのようにお話に関わってくるのだろう、と心ときめくものでした。

 

あらすじ

 自他ともに雨女であると認める女子高生、五雨。

ことごとくイベントを雨に潰され、雨女であることも、雨自体に対しても、嫌気が差していた。

そんな五雨の前に雨にまつわる謎が次々と押し寄せる。

「五色の雨の降る朝に」という謎の書き込みがされた心霊写真。

雨宿りしながらも傘を差し続けている女性。

そして、雨の日にしか姿を現さない雨月先輩にまつわる真実。

掴みどころのない雨月先輩の口から語られる雨に関する知識が謎を解き明かしていく度、五雨は雨月先輩の正体と忘れていた自身の過去に近づいていく。

 

 

 

後半の怒涛の展開に固唾を飲んでしまう

雨の言葉すきな私にとって作品全体の雰囲気も申し分ないものだったのですが、なんといっても物語後半の畳みかけがすごい。

五雨と雨月先輩にまつわる真実なのですが、思い描いていた以上に五雨にとっても雨月先輩にとっても「辛い」ものでした。

それこそ今までの2人の関係が崩れ去ってしまいかねないほどの。

前半で語られていた雨月先輩の雨の日にしか学校に来ない、等のミステリアスな部分のすべてがこの「真実」に集約しているというのが本当に鮮やかで、ふわふわとした前半部分から一転シリアスな話に叩き込まれる感じに「よう怪」シリーズを思い出しました。

 

それでもちょっと微笑ましい終わり方をしていたのが本当に救いで、このまま綺麗に終わってしまうのがちょっと惜しいくらい。

謎解きは雨月先輩がぐいぐいと引っ張っていくものの、普段は手がすぐに出てしまうのもあって何かと五雨が先輩を尻に敷いているという、どこかちぐはぐな2人のやりとりをもう少し見ていたい......。

 

 

 星屑の雨

本当に惚れ惚れとするぐらいにたくさん雨の話が詰め込まれていて、所々ロマンを感じずにはいられなかったのですが、そういう意味では二話目の星屑の雨にまつわる話がいちばん印象に残っています。

「今宵の雨の中には、星屑が閉じ込められているのだ」

p.177

 作中でも浪漫の領域、と言われていたけれど、これは曖昧なままにしておきたい......。

流星電波観測という言葉もこの小説を通して初めて目にしたのですが、もう響きから字面までロマンしかない。

流星電波観測。

 

それからこの二話目の中で雨月物語に触れられる部分があったのですが、こういう古典を下敷きにしたのもすきすぎる。

こういうのに出くわす度に元ネタ読み漁りたくなるの、本当にずるい。

そして同じく雨月物語をオマージュしたような作品を割と最近読んだ気がするのだけれど思い出せない......なんだっけなんだっけ。

 

 

 

 『雨のことば辞典』とかいう必携本

この作品の刊行が知らされた時に、すぐに思い当たった本があって、私も時々本棚から手に取ってぱらぱらとめくるのですが、これまた雨(のことば)すきにはたまらない一冊で。

雨のことば辞典 (講談社学術文庫)

雨のことば辞典 (講談社学術文庫)

 

 

これ、本当に雨に関することばが網羅されてて読んでるだけで楽しくて図鑑開くみたいな気持ちでついぱらぱら捲ってしまう......。

今回の『やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女』の巻末に主要参考文献としてこの本の名前が載っているだけで、なんだかひとり、趣味の話が通じる仲間を見つけたみたいに、盛り上がってしまいました。

それこそ雨の数だけ名前や物語があって、その情景や状況を思い浮かべて想像を広げていくのが楽しくて楽しくてたまらないのです。

 

だからこそこの小説はテーマからして本当に私の趣味どんぴしゃで、新たに素敵な雨にまつわるエピソードも知ることもできて大満足でした。