ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『インサート・コイン(ズ)』

『インサート・コイン(ズ)』 詠坂雄二

インサート・コイン(ズ) (光文社文庫)

 

古くからある著名なゲームを題材にした短編集。

各短編のタイトルだけで、どのゲームを題材にしたのかきっと分かる人には分かるので、目次を眺めるだけでもちょっと楽しい。

私自身、筋金入りのゲーマーでも、往年のレトロゲーマーでもなく、少々嗜む程度なのですが、扱っているゲームが名作揃いなだけにタイトルだけでピンとくるものばかりでした。

作中にも様々なゲームの裏話であったり考察だったりと少々マニアックな内容も含まれていて、いちゲーム好きの私としてはそれだけでとても楽しく読むことができました。

 

主人公はゲーム雑誌のライターをしているのですが、所々地の文で現実的なものの考え方やちょっとした諦観に似たものを漂わせている部分が垣間見える。

全体的に渋く後を引くような雰囲気の物語で、謎は解決するもののどこか寂寥感のようなものが残る終わり方でした。

この主人公の性格も相まって、物語の結末はより一層どこか影を落としたようなものに。

 

 

『穴へはキノコをおいかけて』では、スーパーマリオシリーズにてキノコは動くのにファイアフラワーは動かない理由の考察が書かれていて、なるほど、と思わず感心してしまいました。

 

 

五つの短編の中で、特に印象に残っているのは『残響ばよえ~ん』。

タイトルの通りぷよぷよを題材にしたお話なのですが、主人公の淡い青春時代の初恋とゲームを引き合いにしたちょっとしたミステリのバランス具合が私好みでした。

どこか学校内ではずれて浮いていた少女とゲームセンターで出会ったのをきっかけに、互いに言葉少なにゲームをし合う仲になり、最後にある「賭け」をしてぷよぷよで勝負をすることになります。

大人になった主人公が思い返す形で当時の謎を解明するのですが、現実味のある結末に思わず苦い笑みが漏れてしまいました。(きらいじゃないです)

ゲームを題材に男女の関係を描いた作品も、こうしてみると結構たくさんありますね。

このブログで感想を書いた作品で言うと『ゲーマーズ!』とか。

個人的に気になっている本の中では『放課後のゲームフレンド、君のいた季節』とか。

ちなみにぷよぷよは3連鎖くらいできれば満足するタイプの人間です。

 

 

もうひとつ印象的な作品が『そしてまわりこまれなかった』。

タイトルはドラゴンクエストシリーズにて敵モンスターからの逃走に失敗した時に表示される「しかしまわりこまれてしまった」というメッセージのパロディ。

こちらもドラクエ1~3で共通する世界観や当時の少ない容量でいかに作りこむかという工夫について少々マニアックな内容にも触れられていて楽しく読めました。

ドラクエ3における最大の伏線は何か、を巡って主人公が友人の自殺の際の心境を推し量るのですが、友人からのメッセージとこのタイトルの組み合わせを見ると思わずどきり、とする。

ちなみにドラクエみたいなRPGでは船など世界を自由に移動できる手段が増えると寄り道しすぎてストーリーに戻る前に飽きて再開までに時期が空くタイプです。 

 

 

 

詠坂さんの作品は、『リロ・グラ・シスタ』を読んだことがあるのですが、あとがきや

作中の登場人物のちょっとメタっぽい発言から他の作品とのちょっとした繋がりがあるようなので(というより詠坂という名の作家が登場する時点で相当メタい)、ちょっとずつ『遠海事件』や『電氣人間の虞』も読んでみたい。

 

 

 

リロ・グラ・シスタ: the little glass sister (光文社文庫)

リロ・グラ・シスタ: the little glass sister (光文社文庫)