ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『青の数学2 ユークリッド・エクスプローラー』

『青の数学2 ユークリッドエクスプローラー』  王城夕紀

青の数学2: ユークリッド・エクスプローラー (新潮文庫nex)

 

 

数学を題材にした紛れもない青春小説『青の数学』シリーズの2巻目にあたります。

shiyunn.hatenablog.com

 

 

 

身の回りの数字を記憶することができる主人公の栢山と、数学の問題を用いた決闘に様々な思いを託す登場人物たちの物語。

 

とりあえず。

3乗のラマヌジャンのタクシー数をこの記事が投稿されてから2日間くらいは覚えておくので、誰か私に訊いてください。

つまり、2通りの3乗和で表せる最小の数字のことですね。それなら1749になりますね。

って、何食わぬ顔でさらりと答えてみたい。

 

いや、もちろん私にとって何処と無くお洒落に感じる高尚なやり取りもこの作品がお気に入りの理由のひとつなのですが、何よりも自らの悩みを重ねて暗中模索しながら数学の問題に取り組む様と、それらが一緒に解けて目の前が広がってゆく展開、描写がたまらなく爽快なのです。

 

 

前回の夏合宿を経て、同じく数学に向き合う者たちの地力がはっきりし、数学を続ける意味を掴み兼ねている中、数学決闘サイト上でダークマターと名乗る辻斬りのような人物が現れ、ひとりまたひとりと決闘の場から姿を消してゆく。

 

決闘という形で数学を続ける意味を考え続ける場面は、ひたすらに静かに描かれているのですが、その静謐さとは相反するような登場人物たちの熱い思いが描かれています。

 

 

私のブログ内のアクセス数を比べても、多くの方が『青の数学』の検索をされているようで、そうだよね、この本、めちゃくちゃ面白いよね、と顔も名前も知らない誰かと手を取り合いたい気分です。

 

 

以下、内容に触れている部分があります。未読の方はご注意ください。

 

 

まず何よりも印象に残っているのは、物語の節々で挿入される父を亡くしたと思われる少年と、ある男性とのやりとり。

そして、それぞれの信じる数学の在り方を賭けた皇の決闘の行方。

 

 

 

私はこの少年のことをなんとなく、二宮だと思って読んでいました。きっと旅のイメージや肌が焼けている描写からそう思ったのかもしれません。

 

ただ、この正体がはっきりと分かるのが皇と二宮の決闘の佳境、それも難局と思われた皇が戦況をひっくり返す場面というのが、とても熱い。

245ページの「またな、皇大河」というひと言を見た時、思わずぞくっとしました。

 

 

そんな皇少年と柊先生のやりとりの中でも、お気に入りなのは、62ページの「確かに伝えなければならない、確かに伝えたい、ということがどれほどの望みなのか」という言葉に付随するやりとり。

もちろん、0の発見という数学的な見方から切り取られているのですが、こうして書きたいことをつらつらと言葉を使ってネットの海に流すことができているように、伝えられる、伝わるって容易なことではないよね、としみじみ。

 

 

 

また、栢山くん始め数学を続ける理由をひたすらに悩んでいたのですが、きっと、何かを続ける理由を確かに持ち続けるのは難しい。

私だって、読書をする理由、わざわざ思ったことを言葉に起こす理由を、明文化しようと思えばできるけれど、きっとどれもしっくりはこない。

自己形成のため、など着飾った言い方はいくらでもできるけれど、多分、そうするのが1番性に合っているような気がするから。よく分からないけれど。というのが近いのかもしれない。

 

そんな、悩みにゆっくりと時間を使って向き合ってゆく栢山くんたちの姿にどこか共感しながらも、私には少し眩しかったりもする。

 

 

 

これから、栢山くんが周りの人たちと数学を通してどのように切磋琢磨してゆくのか楽しみで仕方ないです。

 

 

 

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