ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『ブックマートの金狼』

ブックマートの金狼』 杉井光

ブックマートの金狼 (NOVEL0)

 

 

ノベルゼロの刊行ラインナップの中で、私が手にした2冊、のうちのひとつがこちら。

もうひとつの『インスタント・マギ』は、魔法が存在するという設定に惹かれて買ったのですが、こちらも書店員が主人公の物語、ということで勢いで買ってしまいました。

杉井光さんの『神様のメモ帳』もいつかちゃんと読みたい......。

 

 

 

先ほども述べたように、今回の主人公は、新宿にある「くじら堂書店」の店長を務める宮内直人。

作中に実在する本の名前もいくつか飛び出して、悪戦苦闘しながら書店を切り盛りする直人の姿も描かれているのですが、そんな彼のもとにあるトラブルを解決してほしいという頼みが舞い込む。

かつてチームを率いて裏社会に名を轟かせていた直人。

その稼業からはすっかり足を洗い、今は「ふつう」の人として書店を営んでいたのですが、過去の事情を知る人からの頼み事ということもあって断り切れずに、直人はトラブルに巻き込まれていく......。

 

噂と違わず、ひとたび誰かと拳を交える事態になれば、修羅のような強さを発揮する直人ですが、ことあるごとに書店の心配をしているところがなんだか微笑ましい。

持ち込まれたトラブルはどんどん深みにはまって複雑化していくのに、問題を解決していく最中、他人の持つ本を盗み見てあれこれ思いめぐらせてしまうなど、直人の書店員の血がふつふつと沸いてしまう場面が何度もあって、そのちぐはぐな感じがちょっぴり可笑しくて。

それから、裏社会では直人の名前を知らない人はおらず、顔を合わされば直人に頭を深々と下げて尊敬の念を示す人が何人もいる程なのに、直人と同じ書店で働く吉村さんには頭が上がらずたじたじなところも。

 

改めて、なんで直人は書店員をやっているのだろう、あるいは、裏社会で名を轟かせようと思ったのだろう、と思ってしまうほどに表と裏のイメージは大きくかけ離れている。

直人の喧嘩の強さも現実離れしたものでしたが、かつてのチームのメンバーも中々に濃ゆい人ばかりで、ごくごく私個人の印象から言わせてもらえるのであれば、あまり関わり合いにはなりたくないな、と思ってしまうくらい。

 それでも、なんだかんだ言って、直人のピンチにかつての仲間が集うというのは、王道であるとわかりながらも、ぞくぞくとしてしまう、

それから大人の男性向けレーベルということもあってか、『インスタント・マギ』もそうだったのですが、あらすじを読んで思い描いた以上に血の匂いのするお話でした。

 

 

 

また、かつては名を馳せていた、他人に何と言われようと今の仕事が大好き、トラブル解決は渋々、譲れないことに対してスイッチが入ると誰も敵わない、という様々な共通点から、『三軒茶屋星座館』の主人公の和馬を思い出しました。

 

......というか私の頭の中のトーキョーでは既にそれぞれ新宿と三軒茶屋で働いていて、何かあれば嫌々ながらも手を尽くす2人が存在しているのです。

 

 

多分、これから新宿の本屋さんに足を運ぶことがあれば、書店員さんを見かけるたびに「あの人のかつての裏社会の顔は一体......」と想像を巡らせてしまう日々がしばらく続きそうです。