『宝石吐きのおんなのこ 〜ちいさな宝石店のすこし不思議な日常〜』 なみあと
2016年某日、書店にて棚をぼんやり眺めていた折、『宝石吐きのおんなのこ』というタイトルを目にする。
宝石を吐く少女の物語……?
青柳碧人さんの『希土類少女』に出てくる、レアメタル生成症候群だ!
と、ふと私の脳裏に稲妻走る。
(厳密には色々と違うし、もはや物語の雰囲気も正反対と言っていいくらい)
そうやって今まで読んできた本とびびっと繋がるなんとも言い難い爽快感や万能感に似た何かには勝てないのです。
そうやって脳裏に走り出でた稲妻はやがて神経を伝い、それは電気信号となり私の指先を動かして財布の口を緩めさせるのです。私には到底理解できないようなどこかの言語で書かれた医学書できっと裏付けられているに違いないです。
体内にて生成された宝石を吐き出すことがある主人公である少女のクリュー。
珍しい症状のため過去に監禁され手酷い扱いを受けていたところを、スプートニクという名の旅商人に助けられて以来、彼と共に宝石店を構えている。
クリューが自然に吐き出した宝石をスプートニクが真剣な眼差しで加工して売り物にする。
また、スプートニクはクリューのボディガードの役割も担っており、クリューの症状については基本的に誰にも知られていない、はずである。
まず、このクリューことクーの一挙手一投足がとても可愛らしくてたまらない……。
多分、この可愛らしくてたまらない、はきっと親戚の幼い甥や姪に向ける「可愛らしい」と限りなく近い、
スプートニクに対して恋心のようなものを抱くものの、子ども扱いされ、むくれてしまったり、スプートニクの好きな食べ物を健気に用意したり。
怒るのも喜ぶのも常に全力で、側で微笑みながら眺めていたい気分。
また、このお話の世界観でお気に入りなのが、魔女が存在しているということ。
魔法や魔女という響きに憧れを抱く私としては、この世界の魔法は一体どのような位置付けなのかと、わくわくしてしまう。
この世界では、宝石は魔力を蓄える力があり、宝石と魔法は切っても切れない関係にあるということもあってか、ある日宝石店に魔法少女ナギたんを名乗る人物から、怪盗予告状が届く。
……いや、まあ、未読の方は「ナギたん」って、その名前はなんだよ、と言いたくなるのも、分からなくは、ない、です。
その名の通り、はぐれの魔法使いでかなりのらりくらりとしたキャラクターなのです。きっと今、名前からぱっと想像した性格でほとんど間違いないと思います、はい。
そんなふざけた名前かと思いきや、ちゃんと自分なりの考えを持って行動を起こしていることが後に分かるのですが、それでも私の中で「ナギたん」のインパクトのマイナスイメージが有り余る。
あれ、です、
なんていうか、どちらかと言えば褒めてる感じの、
私なりの貶し愛です。
作品全体の雰囲気は、イラストも相まってとても柔らかな一方で、街の様子や世界観はきっちりと組まれていて、本当に隅から隅まで堪能しながら読みました。
……気がついたら、身に覚えはないのですが、続刊も手元にいつの間にかあったのでのんびり読んでいきたいです、
実はスプートニク、の名前だけで、ベルカとかストレルカ、とかお話とはまったく関係のないところで心がときめいてしまったというのもあるのですが、あまりにも長くなりそうなので割愛……。