『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』 十市社
もともとKindleにて発売されていた当作品。
2014年の単行本化を経て文庫化。
この作品、単行本として発売された時からタイトルや表紙の雰囲気からとても気になっていたので、ようやくこうして文庫として手に取ることができました。
高校入学後、小さな失敗をきっかけにクラスメイトから幽霊として扱われる主人公の少年と、そんな少年と誰もいない図書室でこっそりと言葉を交わすようになる少女の物語。
※結末にやや、触れています。ネタバレを避けたい方はご注意ください。
主人公の少年、架(かける)の「幽霊」としての存在がゆらゆらと揺らぎながらお話が進んでいくので、いい意味での疲労感と爽快感を久しぶりに感じるお話でした。
架が本当に幽霊なのか、はたまた単にクラスメイトから幽霊という扱いを受けているだけなのか、どちらにも取れるような描写が続き、「あれ、これは幽霊?」または「途中から幽霊になったの?」と目の前の登場人物のやり取りを理解するのとはまた別のところで考えながら読み進めました。
また架と仲を深めることになる少女、高町の考えていることもぼんやりとしていて、掴み所がなくて、その目の底に何を湛えているのかと時々落ち着かなくなる。
友人の前では、普通であると思われるような女子高生を演じるのに、架の前では非常にドライに物事を捉えている。
そんな高町の根っこにある、ぐるぐると絡まった複雑なものの端っこを見つけて以来、架の中で高町のことを知りたいという思いが大きくなってゆく。
結末に向けての最後の部分は、本当に落ち着かない気分で忙しなくページを捲ってしまいました。
はっきり言って、高町の抱えている問題は、とてつもなく残酷だ。
そんな残酷な問題もはじめから姿を現しているわけではなく、読み進めるうちに姿を変えてゆく。
ここで、物語が終わってしまっても、「小説」としてはなんの問題もないだろう、という場面がいくつも続き、残りのページ数が気になってしまう。
まさに「どうなっちゃうの」「どうなってしまったの」という状況が続き、頼むからまだ手離さないで! と作者さんに祈るような気持ちで。
私の思う限りでは、ちゃんと程よく落ち着いた結末を迎えてひと安心でした。
そして、「幽霊」としての架の成長や変化にはとても目を見張るものがあると思うのです。
彼が「幽霊」であったからこそ、得ることのできたかけがえのないもの。