ビブリオバトルを取り扱った物語。
上巻に引き続き、下巻。
上巻の感想はこちら。
今回は、武人の人となりが掘り下げられていて、彼が御曹司と呼ばれるのを嫌う理由や、ノンフィクションしか読まない理由が語られます。
上巻のどこかポップなイメージと比べて、武人くんの話やビブリオバトルの使われ方など、日常生活を送る私が無視することのできない含蓄があり、気が付けば物語にのめり込んでいました。
相手のビブリオバトル部を打ちのめす場面は、少し爽快感を覚えながらも、心のどこかにもやもやとしたものが残ってしまう。
……それも、ちゃんと物語の最後には、晴れやかになるのですが。
タイトルの『翼を持つ少女』の「翼」がとても印象的でした。
この世には、空を飛ぶことの素晴らしさと、翼を切り取る痛みを知っている人がいる。翼を切り落とした人のために、胸を痛めてくれる人がいる。あなたのために泣く人がいる——それを知っていただきたいんです
同情、という言葉だけを切り出すと私の中ではあまり良くないイメージが先行してしまいがちだったのですが、
それでも、理解は出来なくとも、誰かのために、代わりに「かなしい」と言葉にすることで、降りる肩の荷もあるのだと信じていたいです。
あとがきや池澤春菜さんの解説もとても楽しく読むことができました。
ビブリアシリーズや、文学少女シリーズのSF版となる作品を作り上げたかったようで、まんまと術中にはまっている私……。
参考文献に当たる、作中に登場した作品も144冊にのぼり、10ページ程に渡って列挙されているのは、かくじつにころしにきている……。
そして帯にも引用されている池澤春菜さんの、
ね、本を読むってこんなに楽しい、
こんなに幸せ。
この言葉以上に、今の私の心情を表す言葉を私は知らない。
本が好きな私にとって、とてもたまらないお話でした。