ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『ただし少女はレベル99』

『ただし少女はレベル99』  汀こるもの

ただし少女はレベル99 (講談社ノベルス)


前々から気になっていたものの、なんとなく見送りにしていた作品。
先日書店に出向いた時に、シリーズ最新作発売ということもあってか面陳されていたのが目に入りました。
「意識して表紙見たことなかったけれど、よく見たら、この表紙イラストusiさんだ!」
と思った時には、時既に遅し。


『リライト』など、今まで読んできたusiさんイラストが表紙の作品たちと線が繋がるような、ぴりっとした快感には抗えず……。
あくがれいづる、わたしのりせい。








とても強い魔法の力を秘めた少女を巡る物語。
初めて汀こるものさんの作品を読んだのですが、当初抱いていたイメージよりもだいぶアクが強くて、読み始めて早々にほんわか物語スイッチから切り替えました。
後でメフィスト賞出身と知り、腑に落ちるなど。
神話やアニメやゲーム等の引用も豊富で、私の知っている事柄をそこに見つけてはなんだか嬉しくなる。
ちゃちな読経などに頼らず開幕メギドラオンくらい撃ってみせよ、オタク小僧。
この台詞は、私のいつか実生活で言いたい台詞メモに加わることになりました。
めでたい。





物語の中心となる少女、出屋敷市子は、その力の強大さから八十八もの妖怪を従える。
身の回りのことはすべて妖怪たちが世話を焼いてくれるというのもあり、彼女は裏も表も「ひとり」を極めているため、人との距離の測り方が絶望的に分からない。
学校内で様々な噂を立てられながらも、すべからく真っ向に一蹴してしまう。
そんな「ひとり」で生きていく生き方しか知らない少女。

4つの連作短編から構成される今作。
彼女の力が大きすぎるが故、妖怪がらみ人間がらみ様々な事件に巻き込まれてしまうのだが、その事件がどれもあまりにも重たい。
世話焼きの元人間の天狗や、好戦的な妹、頭の悪い兄の白蛇の双子、女好き狐たちと交わされる会話は気の抜けるくらい軽いのに、気を抜いていると一気にシリアスに突き落とされる。

とても丁寧に遠回りをして落とし穴に突き落とされるみたいな。

そんな事件でも、市子の解決方法が火種ごと握り潰して消すみたいな、あまりにも力づくなので、どのお話も読み終わった後、なんとなく「まあいっか、よいよい」という気分になってしまう。

その感じがとてもくせになる。
アニメしか観ていないのですが、西尾維新さんの『化物語』から始まる物語シリーズにどこか似ているかもしれません。


最後のお話も、過程はとても壮絶できっと淀んだ気分になってしまいそうになったものの、これまた終わりがいい意味で力の抜ける終わり方で、細かいところを見れば問題だらけの人(と妖怪)たちだけれど、なんだかそのままで良いような気になってしまう。


何より市子、もとい宮のぽんこつ傍若無人っぷりがふっと笑ってしまうのを通り越していっそ清々しい。