ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『“文学少女”と繋がれた愚者』

“文学少女”と繋がれた愚者【フール】<文学少女> (ファミ通文庫)


今回の題材は、武者小路実篤の『友情』。
これもまた、私の読んだことのない作品でした。


お話が進むごとにどんどん面白くなってゆくので、まだまだ続くとはいえ、このシリーズが既に完結している、という事実が少し悲しい。


以前登場した芥川くんを巡ってお話は進んでいきます。

まだシリーズ途中まで読んだだけですが、この物語の登場人物は何か考え事をする時、ことばが先行してしまう人たちが多いような気がします。
私の言いたいニュアンスが伝わるのかはわからないのですが、自分の立場や感情がどこから来るのか、不安定でとらえきれない何もかもをことばで塗りたくってしまい、いつのまにかことばに負けてしまう。

芥川くんも今回、ひとりよがりになりすぎてしまう。
何の小説で読んだのかは覚えてないのですが、“素直になりどころを見失うと自分を嫌いになるだけだよ”というのがまさにぴったりで。
歩み寄ろうとした心葉くんにもひた隠しにしてしまう。



きみが泣いているのではないか気がかりで眠れないと言ったら、きみは怒ってオレの頬を打つだろうか。
芥川くんが誰かに宛てた手紙、という形でモノローグが挟まれていくのですが、
その中でこのことばがすごく印象的でした。……というか、すきです。



ことばをするするとほどき、私自身の経験や感情に基づいて継ぎ接ぎして色をつけてふさわしい名前を考えていくのが、とてもすきなのです。

作者の意図とは大きく外れてしまったとしても、誰のものでもない、私自身のことばにしていく過程が、とてもすき。

きっと芥川くんはこんな気持ちで、こんな自分が嫌で、という風に。



それから、私としては再び竹田さんが登場したことが嬉しかったのですが、
心葉くんが竹田さんに「竹田さんは変わったね。前より生き生きしてる」と言った際の、返事がとてもひやりとする。
孤独で冷めた目をしながら「楽しくありませんよ」という竹田さん。

それでも無理をして遠子先輩や心葉くんといるわけではないことに、ちょっぴり安心する。
ちょっとしたサブキャラクター、という扱いにはなるのかも知れないけれど、描写や記述が少ない分、ちょっぴり気になって仕方がないのです。

物語の中の人物ではあるけれど、竹田さん含め、長い時間がかかったとしてもそれぞれの変化をゆっくり側で見守っていきたい。
どこかで、折れてしまわないように。




そして最後の最後に、芥川くんが手紙の差出人の名前が出てくるのですが、あまりにも予想外で続きが気になってしまって仕方がないです。
それから、芥川くんとどの程度の仲なのか。

さらにあとがきにて、次巻では琴吹さんに焦点が当たるということでとても楽しみです。