今までに野﨑まどさんの作品はいくつか読んだことがあるのですが、私の中ではつかみ所がないという印象がとても強いです。
もちろんいい意味で。
多才、というより、つかみ所がない。
デビュー作の『[映] アムリタ』が全体的にコミカルな話かと思いきや、とてつもない終わり方をしていて衝撃を受け……。
その後、登場人物のコミカルなやり取りがクセになり、『舞面真面とお面の女』、『死なない生徒殺人事件』、『小説家の作り方』、『パーフェクトフレンド』と順に読んだのですが、
実はすべてが『2』に至るための物語で……。
かと思えば『know』のしっかりとしたSF作品っぷりに驚き、特に登場人物の最後のことばが印象的で今でも覚えていたり……。
かと思えば『野﨑まど劇場』で好き放題やらかしたり……。
「野﨑まど 将棋」と調べてもらえれば分かるかと思います。
そんな野﨑まどさんの作品が今回講談社タイガから刊行されるということで、私の知る野﨑まどの中で、一体どの、野﨑まどが来るのか、とわくわくしていました。
そして、また私の知らない野﨑まどがここに……。
どちらかと言えば、コミカルで遊びの要素を含んだ作品の印象が強かったのですが、今回の作品はこてこてのサスペンス……!
主人公である検事の正崎善を巡るお話にどきどきしっぱなしでした。
なんだこれ、またとんでもない作品を……。
製薬会社の臨床研究成果の改ざんについて調査を進めていく中、押収した資料の中から不気味な程に「F」の字で埋め尽くされた不可解な紙面を見つける。
その紙面の謎を追ううちに、大物政治家の影を見つけ、そこに巨悪の気配を感じ取る。
……だが肝心の決定的な証拠を押さえることができず万策尽きかけた頃、事態は思わぬ方向に。
途中まではある意味王道的な展開で、それに乗っかってすごくわくわくしながら読んでいたのですが、後半からとんでもない方向へ転がり出して読み終えた頃にはとてつもなく大きなスケールの話に。
ある程度は先の展開を予測しながら読んでいて、もちろんある部分ではその予測通りだったのですがさらにそれを裏切る結末でした。
※以下ネタバレ含みます。未読の方はご注意ください。
正直誰が死んでしまう、とか
サブタイトルにもある、女、がひとりであることはなんとなく想像してましたが、あんな「死は救済」のような終わり方をするとは思ってもいませんでした。
しかも、この先どうなるのかまったくわからないです……。
ここからは普通に作中のことばを使っていこうと思いますが、
新域組が果たして世の中に受け入れられるのか、それほどまでに曲世はカリスマなのか。
そしてその新域に対して善はどう立ち向かうのか。
また、齋の裏切った今、守永や野丸はどのように立ち回るのか。
……気になる。
続きの『バビロンⅡ』は2016年春、ということで、またとんでもなくスケールの大きな“問題作”が生まれてしまった……。