ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『妖精作戦』

妖精作戦』  笹本祐一

妖精作戦 (創元SF文庫)


よく足を運ぶ書店の棚の端っこで、ひっそり平積みされていて少し前から気になっていたこの作品。
読みたいけれど、実際手に取るのは当分先になりそう……、
と、思っていました、ついこの間までは。


別の書店にて、近々映画化される有川浩さんの『レインツリーの国』の隣にPOPもなしに何気なく置いてあるのを見かけ、もしかして『レインツリーの国』での主人公たちの出会いのきっかけとなる『フェアリーゲーム』なる小説って『妖精作戦』なのでは⁉︎  と。
この意味ありげに一等地に置かれた『妖精作戦』、解説者には有川さんの名前、そして《妖精》《フェアリー》! 
そう思った時には自然とそのまま足は会計へ。

こういう記憶の中の点と点が繋がる喜びには抗えないのです。
なんとずるくてきけんな書店なんでしょう。






そんなわけでぺろりとたいらげてしまったのですが、とてもわくわくするお話でした。

主人公の少年、榊の高校にある日、小牧ノブというある少女が転校して来ます。
ところが、この少女、曰く付きにて。
裏表紙のあらすじに既に書かれているので書いてしまいますが、超能力を使えるが故に超国家的な組織から追われることに。

小牧ノブが誘拐される場面に出くわした榊は、仲間とともに彼女の救出へ向かう。



救出へ向かう、と書いてしまうとなんだか陳腐に思えてしまうけれど、この救出劇、スケールが尋常ではない。
改造バイクや銃や潜水艦や戦闘機などいろいろ出てきて、そういう方面に疎い私でも、なんだかいろいろやばくてすごいスペックであることは伝わりました。
最終的には、宇宙にまで飛び出してしまうのだから。

あとどんな状況においても、榊くん含めた仲間たちが非常にお気楽な感じがとてもいい塩梅に浮世離れしていて、読んでいる私も一緒に救い出しに行っている気分になります。
……超能力とかいう時点で浮世離れてるという野暮な指摘はよしてくださいまし。

なんていうか、現実的な身の危険や無力感はなくて、ただひたすらに冒険譚としてわくわくする感じ。
どうなってしまうのだろう、というより、これから彼らは次にどんな行動を起こすのだろう、に近い感じ。



解説で有川浩さんも触れていましたが、かなり無茶はしながらも、あくまでも榊くんたちが高校生の延長線上からぶれずに小牧さんを救いにいくところがよい。
はちゃめちゃしながらも、彼らは高校生なのだと感じる部分が所々にありました。
彼ら自身の意識として、たぶん高校生であるという感覚がしっかり根付いている気がします。
小牧さんを救出に行く際にも、しっかりと学校に嘘の欠席連絡を入れ、道中事前に連絡した日に帰ることができなかったらどうしよう、と思うあたり。


この『妖精作戦』は今でいうライトノベルの先駆けとなる作品のひとつであるみたいです。
……この作品が出た当初の衝撃を今となっては想像するしかないので、ちょっぴり惜しい気持ちもあります。



妖精作戦』は、ひとつの作品として最後は丸くまとまっていましたが、シリーズ通しての結末はどうやら読者に委ねられる形のようで。
『レインツリーの国』でも結末についていろいろ書いてあった記憶があります。
何年か前に単行本で読んだきりで、良い感じにうろ覚えなので、シリーズ通して読み終えた後、私なりの結末を考えてみたいです。



そしてただ単純に、今回で最後に一段落したように見える彼らの日常と小牧さんの超能力という非日常がこの先どのように関わり合っていくのかとても気になるので、ぽつぽつと読み進めていきたいです。