ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『“文学少女”と飢え渇く幽霊』

“文学少女”と飢え渇く幽霊野村美月

 

“文学少女”と飢え渇く幽霊【ゴースト】<文学少女> (ファミ通文庫)

 

前作に引き続き、文学少女シリーズ第二弾。
 
前回にも増して幻想的な雰囲気が立ち込めるお話でした。
 
ここは人間嫌いの天国だ。
この一節から始まる今回のお話の題材はエミリー=ブロンテの『嵐が丘』。
こちらも読んだことはなかったため、物語の各所に『嵐が丘』の要素が散りばめられていることに気が付かず、最後の最後の種明かしの場面で其処彼処に引用されていたと知った時は思わず、ぞくっとしてしまいました。
 
嵐が丘』読んだ上で読んだのならきっと楽しくてたまらない……。
まっさらな状態で物語の仕掛けを楽しむことができた反面、『嵐が丘』を読んでからこの作品を読んでみたかった気持ちもあってとてももどかしい……。
 
けれどもきっと『嵐が丘』既読だったら既読だったで、いろいろと展開を先読みしてしまいそうなので、ある意味前知識なかったからこそ純粋に楽しむことができたのかもしれません。
いつか『嵐が丘』読んで、もう一度この作品読み返したいです。
……いつか。
 
 
というか思いの外、私に好みにどんぴしゃでこの先のお話が楽しみで仕方ないです。
 
 
 
今回のサブタイトルになっている、幽霊。
というか、終わり方めちゃくちゃ後を引くというか切ないというか、ふわっとします。
ふわっと。
 
自ら既に死んでいると語る九條夏夜乃。
そんな夏夜乃と同じ姿をした雨宮蛍。
そして蛍の周りに現れる不思議な男性
 
 
何故かものをたべる事を拒み続ける蛍と、3人の間柄に大きく根を下ろす復讐心。
 
 
 
※以下、内容に大きく触れています。未読の方はご注意ください。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
蛍と黒崎さんの間柄と、どうする事も出気なかった流人くんがとても印象的でした。
 
最後の蛍からの手紙のことばの選び方がとてもよい。
 
天国よりも、どこよりも、わたしはあの場所にいたかったの。
 
流人が彼女自身を好いてくれたことを感謝し、流人の手を取っていたらきっと幸せだっただろう、と思いを綴る蛍。
抗いようがない、という気持ちもあったのかもしれないけれど、それでも最終的には蛍は自分自身で夜しかない部屋を選んだ。
あの場所にいるしかなかった、のではなく、あの場所にいたかった。
 
 
 
ごめんなさいとか、ありがとうとか、そんな言葉、欲しくなかった
 
そしてそんな蛍の手紙を細かく破いて風に散らす流人。
流人自身に向けた謝罪や感謝なんかよりも、きっと何よりも蛍の幸せを笑顔を願っていたのだな……と思うと。
 
 
 
 
 
このお話ですっかり文学少女シリーズの世界観がお気に入りの私。
めちゃくちゃ美味しかった……。
遠子先輩の明るいテンションと対象的に影を落とすような終わり方がとてもよい。
 
まだまだ文学少女シリーズのお話が続いていくことをとても幸せに感じます。