前作(『ようするに、怪異ではない。』 - ゆうべによんだ。)に引き続き、「ようかい」シリーズ2作目。
サブタイトルにある「がらんどん」も妖怪の名前なのですが、最初目にした時、その響きから昔読んだ絵本をふと思い出しました。
三びきのやぎのがらがらどん (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)
- 作者: マーシャ・ブラウン,せたていじ
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1965/07/01
- メディア: 大型本
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ある夏の日のがらんどん。
チョキン、パチン、ストン。
はなしは おしまい。
そんな訳で、がらんどん含め今回も様々な妖怪をテーマとした短編から構成されています。
人間の私からすると何をしたいのかわからない珍妙な妖怪ばかりですが、文車妖妃(ふぐるまようひ)、字面も含め割とお気に入りです。
恋文等の手紙に宿る執念が、妖怪として形を成した怪異、とのことで、それだけ聞くといろいろとファンタジックな方向へ想像が膨らみます……。
……かなり頭の中で美化しているのでその姿は検索しないでおきます。
前回は思いがけず皆人がハル先輩を傷付けしまうことになってしまったけれど、今回はどこかふんわりとした日常に寄り添ったお話が多いように思いました。
表紙に描かれている主要な登場人物4人のやりとりの中にさりげなく妖怪が現れる形で。
※以下、妖怪の正体に触れています。未読の方、ネタバレを避けたい方、妖怪の存在を信じている方はご注意ください。
先程お気に入りと言った文車妖妃も文字が消える、ということで、すぐに消えるボールペン、と頭に浮かびました。
……以前にも消えるボールペンを使って文字を消したり浮かび上がらせたりするお話を読んだことがあったので。
妖怪の正体のオチ、というより物語としてのオチも含めてこのお話はとても好みでした。
あまり触れられることはなかったけれど、恋文を海に流した少女の気持ちはどんなだっただろう、と考えてしまいます。
苦しみの中、なんとかして出てきたことばなのか。
乗り越えるため、前向きに吐き出したことばなのか。
穿った見方をしてしまえば、物言わぬ死者にことばとして気持ちを放り投げ、自分の思いを美化してしまう乱暴さ。
それから別の話になりますが、夜な夜な聞こえる赤子の泣き声の正体。
これは私自身も経験があるので、もしかしたらそうかな? と思いながら読んでいたらどんぴしゃでした。
実際猫の鳴き声だと分かっていても、薄気味悪いくらい、本当に赤ちゃんの泣き声にそっくりなんですよね……。
私も最初聞いた時は家の近くに捨て子でもいるのではないかと思いました。
個人的には駄菓子屋小説家の書く小説、とても気になります……。
表題作のがらんどん、結末はある程度分かっていたものの、やはりとても綺麗な終わり方。
ハル先輩ががらんどんの正体を知る展開を心待ちにしながらも、私のもとにはあいも変わらず積読本が知らぬ間に増える妖怪が出続け、そのうち本棚も生み出しそうな勢いなので、もくもく読まねば。