ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『ようするに、怪異ではない。』

『ようするに、怪異ではない。』 皆藤黒助

ようするに、怪異ではない。 (角川文庫)



Twitterで、米澤穂信さんの氷菓シリーズや初野晴さんのハルチカシリーズ好きの人は是非!  という惹句を見かけたので、つい。



高校入学を機に単身で東京から鳥取へ引っ越してきた冬目皆人は、入学早々落とし穴に落とされてしまう。
ひとつ先輩の春道兎鳥(ととり)、通称ハル先輩に言わせれば、妖怪に興味のある人間を見抜くための仕掛けであるらしい。
妖怪の存在を信じて疑わないハル先輩に振り回されながらも、その存在を否定するため、皆人は妖怪研究同好会への入会を決める。

基本的には日常のちょっとした謎に対して、妖怪だ!  と騒ぐハル先輩に対して皆人が理詰めでそうではないことを証明していく形でお話が進んでいきます。







キャラクターの元気っぷりは、どちらかと言えばハルチカシリーズに近いものを感じました。
皆人が“幽霊の正体見たり枯れ尾花”というスタンスでハル先輩を宥めるという、どちらが先輩なのか分からない感じの先輩のはしゃぎっぷりかつ皆人の落ち着きっぷり。

そういえば、氷菓シリーズにも幽霊の正体見たり枯れ尾花という感じの雰囲気のお話ありましたよね。首吊り幽霊にまつわるお話。

ミステリー要素よりも、ハル先輩や皆人や今回加入することになる2人の妖怪研究同好会の人たちとのやりとりの雰囲気が気に入りました。

それから、それぞれの連作短編にはひとつずつテーマとして妖怪が設定されていて、章タイトルの後ちょっとした説明が書いてあるんですが、(私的)マイナー妖怪だらけで、まるでハル先輩に洗脳されている気分。

中には何をしたいのか訳のわからない妖怪もいて、その最たるがいちばん最初のヤカンヅル。
木の枝にヤカンがぶら下がっているだけという珍妙な怪異。
って、珍妙どころじゃないですよね(笑)
昔の人からしたら、よくわからないから、とりあえず妖怪ってことにしとけ、って感じなんですかね。
他にも鎌鼬、精螻蛄、黒髪切、手の目などなど。
ほんのり妖怪に詳しくなりました。

本にまつわる妖怪とかいるのかな、いたとしたら、どんなのかな、とか考えてしまいます。
積読本増やす妖怪はいると信じてます。





それから、舞台となる鳥取県境港市って妖怪で有名なんですね。
「妖怪で有名」って字面だけ見るとなんかおかしなことになりそうですが。
行ったことないので、完全にこの作品を読んだ上での想像なんですが、町の所々に妖怪を模した像があるとかないとか。

妖怪のことをよく思っていない皆人が、その像を見かける度、げんなりする様子が描かれているのですが、彼が妖怪に対してそう思う理由、そしてわざわざ単身で引っ越してきた理由も、物語の後半で語られます。

そんな妖怪に対する嫌悪にも似た頑なな態度から、ハル先輩を傷付けてしまうことにもなるのですが、最後の最後には仲良くしている姿が見ることができて一安心。





そして。
どうやら、続きである「よう怪」シリーズの2作目が8月に出るそうで。
夏に現る、積読本おばけ。