ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『ブタカン! 〜池谷美咲の演劇部日誌〜』

『ブタカン! 〜池谷美咲の演劇部日誌〜』  青柳碧人

ブタカン!: 〜池谷美咲の演劇部日誌〜 (新潮文庫)


以前、同じ青柳碧人さんの作品である『希土類少女』についての記事のコメントにて、この作品をおすすめされたので、早速読んでみました。
(『希土類少女』について。『希土類少女』 - ゆうべによんだ。)



今回で青柳碧人さんの作品を読むのは2回目なんですが、『希土類少女』と雰囲気がまるっきり違いますね。
前回はどことなく重苦しい雰囲気だったんですが、今作は入院することになってしまった親友のナナコの代わりに演劇部の舞台監督をすることになった美咲と部員とのやり取りを中心に非常にコミカルな雰囲気。
一風変わった登場人物たちのちょっとずれた感じの掛け合いでさくさく進んでいくので読みやすかったです。
それでもどの登場人物も演劇に対してしっかりとした自分の思いを抱いているのがすごくいい。




演劇の裏側を覗くことって日常生活ではまったく無くて、それこそ有川浩さんの『シアター!』で読んだくらいでした。
(『シアター!』は演劇部ではなく社会人劇団のお話でしたが)


文化祭公演に向けて、クセの強い部員達に翻弄されながらも舞台監督の役割や用語を覚えていくんですが、業界用語みたいなのを目にするとなんかそわそわするの私だけですかね?(笑)
それが横文字ならなお良いんですが、なんか自分も少しだけ深い世界に足踏み入れた気分になると言いますか……。





それから早乙女先輩という主に脚本を手掛ける登場人物がいるんですが、早乙女先輩が演劇について語る場面がすごく印象的です。
演劇に対しての「もったいない」という言葉の使い方がいい意味ですごく引っかかってます。
「これが、俺が演劇を選んだ理由だ。小説はいくら時間が経ってもそこにある。だけど、芝居は過ぎてしまったらもうそこにはない。芝居は、演劇ってのはな、本質的に『もったいない』存在なんだよ」
感覚では理解できるけれど、かっちりと「もったいない」の意味を捉えきれない感じ、すごくもやもやします。

演劇にはたまに誘われて観に行くことがあるのですが、その度に「もったいない」についてぐるぐる巡りそう。






トラブルはありながらも文化祭公演はまずまずという形で幕を降ろすのですが、
私たちの演劇部はまだまだこれから!  みたいな、なんとも続きの気になる落ち着かない終わり方。
続編は文芸誌の「yom yom」で連載中みたいですね。

恋の行方やナナコの病気の行く末など気になることだらけ。
キャラクター的にナナコは普通に何食わぬ顔でけろっと退院しそうだと、私は思ってるんですが……。


とにかく、続編が文庫として出版されるの心待ち。