※ネタバレには気をつけていますが、登場人物等に触れているので未読の方はご注意ください。
個人的に新刊追いかけている新潮文庫nexの、今回はゆるやか日常ミステリー。
連作短編小説なんですが、全6話のうち、4話までが前座という印象です。
特に目標もなく毎日を生きている主人公のアヤタと友人の灯影院(ほかげいん)は「探偵同好会」を創設することに。
初めの4話は、おちゃらけた灯影院にアヤタが突っ込みを入れながら、アヤタの身の回りの謎を探偵役の灯影院が解き明かしていく。
灯影院とアヤタのコミカルな会話はどこか勢いが漫画ちっくなので、もしかしたら好みが別れてしまうかもしれません……。
5話目の「流霊島事件」から雰囲気が一変します。
田舎の閉鎖的な離党に遊びに行くことになるのですが、閉鎖的な環境であるが故の権力争いに巻き込まれてしまい、ゆるやかな日常どころじゃなくなってしまう。
一族の権力維持の為に利用されて本当にどんよりして息苦しい雰囲気に。
辻村深月さんの『水底フェスタ』のような。
幸生くんという病弱な子が登場するのですが、自らの運命を呪うでもなく、一族に利用される己の運命を静観していて救いのない感じが印象的です。
そんなどこか大人びた幸生くんもどうしようもなく、閉鎖的な田舎で育った人間であると思い知らされるのですが、それがまた。
小説の趣味って人それぞれだと思うんですが、私は後半のどうしようもない感じの方が好みです。
どうしようもない感じ、ってなんか貶してるみたいですね(笑)
なんていうか、どうしようもない無力感みたいなのを描いた小説がいちばんきゅっとする。
こういう話を読んでいる時、自分がどんな立ち位置があやふやで足元から崩れてしまいそうで、すごく非日常的な感じで。
6話も決して明るい終わりではないのかな、と個人的に思っています。
アヤタと灯影院の関係の歪さが顔を覗かせ、まさに灯影院が「探偵役」たる所以がアヤタの視点から語られます。
まあ、そのことに薄っすら気が付きながらもアヤタの取る行動はなんというかアヤタらしいと言えばアヤタらしいのですが。
私にとっては、2人のゆるやかなやり取りや謎解きよりも、登場人物たちの少し歪んだ生き様が印象に残る作品でした。
(あくまでも私の趣味に限った話です!)