今回はこの長いタイトルの作品。
時雨沢恵一さんの黒星紅白さんの組み合わせと言えばキノの旅シリーズが有名ですが、既刊数が多くて手を出すのに勇気が必要だったのでこちらのシリーズを。
それから、このシリーズは小説家のいろいろが書いてあるとTwitterで時雨沢恵一さん自身が紹介していてとても気になっていたので。
タイトルからも分かる通り、男子高校生の主人公がライトノベル作家であることがクラスメイトの声優の女の子にばれてしまい、お互いその秘密を共有しながら高校生活を送って行きます。
ボロが出て他のクラスメイトにばれてしまわないよう、学校での会話は極力控え、週に1度アフレコへ向かう電車の中でのみ会話をする約束をします。
ヒロインの似鳥絵里が演技の深みのためにと原作者である主人公に小説のことをいろいろと質問をしていく形でお話が進んでいきます。
一応今回の作品と次の作品で一段落という構成なので、上巻にあたる今作では各章の冒頭で首を締められている主人公が過去の似鳥さんとの会話を思い返す形で語られているのですが、その理由は下巻までお預けです。
軽い気持ちでこの作品を手に取ったのてすが、予想以上に面白くて読みやすさからも他の人にぜひおすすめしたいくらい。
本が好きな人は特にわくわくして読めると思います。
多分、時雨沢恵一さん自身の経験をもとに大部分が書かれていると思うのですが、主人公がどうして小説家になるに至ったか、どのように小説を書いているのか、小説家の仕事についてあまり知られていない部分まで書かれているので、小説家というお仕事に興味がある人は特に。
私も小学生がスポーツ選手やアイドルに憧れるのと同じレベルですごく小説家のお仕事に興味があったので、多分目きらきらさせながら読んでたと思います(笑)
小説家の手からどんな感じで最終的に本になっていくのか全然知らなかったので、本当に職業見学で初めて商品の生産ラインのすごいメカ見た時みたいな気分。
それから主人公の、設定や会話のワンシーンはめきめきと湧いてくるのにいざ書き始めると地の文がまったく書けない、というの、すごく身に覚えが……。
読書が好きになった中学生の頃、自分も書いてみたい、と私生活にひとさじフィクションを混ぜたような小説を何度か書こうと思ったことがあるのですが、地の文というよりは主人公(≒私)の自問ばっかりであまりにも不恰好なのが嫌になってしまい、書き切ったことがない、という。
もちろん文章だって練習なくして一朝一夕に書けるものではないのですが、スポーツや習い事とかと比べて、普段からことばを使っている分、練習しなくてもある程度は使えてしまうのが余計に悔しかったんだと思います。
それから、主人公くんと似鳥さんの会話の雰囲気結構好きです。
なんていうか、こう、ふにゃっとしてる感じ。
いちゃいちゃしているというよりか、じゃれ合う、という感じ。
この感じ、大好物です。
小説家についてのお話云々関係なく、普通にこれからも2人のやり取り見続けたい……。
そして黒星紅白さんのイラストについて。
今回主人公くんの作品のイラストまで描かれているので、それだけでもすごい次巻以降とても楽しみだったりします。
おまけに、表紙をひっくり返すとそのまんま作中作である『ヴァイス・ヴァーサ』の表紙になるので、読んだ際にはぜひひっくり返してみてください。
小説家になる、という程ではないけれど、少しずつ自分の書きたいお話を書いてみたくなりました。