ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『初恋彗星』

『初恋彗星』  綾崎隼

初恋彗星 (メディアワークス文庫)


前々からワカマツカオリさんのイラストが特徴的なこともあって、書店で目に付く事が多く綾崎隼さんの名前は知っていたのですが、積読本の量と好奇心を天秤にかけ、余裕が出来てから、といつも買い渋っていました。


今回、Twitterにて数人の方がオススメしているのを見かけてから、気になって気になって仕方がなくて思わず一冊。



※以下、核心部分のネタバレには気を付けていますが、所々内容に触れているので未読の方はご注意ください。



タイトルからも分かる通り、あくまでも大きくカテゴライズするならば、恋愛小説にあたると思います。



ひと通り読み終えて思ったことは、私の抱く恋愛感情はこんなに綺麗じゃない、ということ。

読む人によっては、この本の登場人物が抱いている感情の方がずっと複雑だよ、と思うかもしれません。




上手くことばで言い表せる自信がないのですが、私の、一般的に初恋と呼ばれうるものについて思い起こして、小説のお話と比べながら読んでいました。


私の場合に限って言えば、最初に熱っぽいものを感じて、その熱に恋愛のラベルを貼った時からことばのイメージの方に引っ張られてしまう。


なんて言うか、相手のことをすきだと思っていることに浮かれてしまう。


いろいろな雰囲気だったり仕草だったりものの考え方だったり、他の人とはちょっぴり違う部分の気付きによる心の動きが、恋という大義名分の下どれもこれもひとつの大きな箱の中に投げ込まれてフル回転してしまうイメージ。

相手のことがすきだと思いながらもすっかり自分本位になってしまう。





今回の登場人物たちが抱く感情は、まっすぐな印象。


自分のすきな人のすきなところを大事にしていて、すきな人が笑えるのなら喜んでくれるのなら、見た目にも気を使うし時にはいろんなことばだって飲み込むし嘘だって吐く。


当たり前のことなのかもしれないけれど、相手がいるからこそ抱くことのできた感情というところから決してぶれない。


それぞれ、初めて抱いた恋と呼びうる感情を、すごく大切にしているのです。

または、そんな感情を抱かせてくれた相手のことを。




基本的に幼馴染4人組を中心に話が進んでいき、有り体に言えば決して穏やかに話が進むのではないですが、どろどろと嫉妬に塗れた話にはなりません。

先ほども書いたように、いろいろなことばをひた隠しにするのだけれど、気まずいからとか立場が悪くなるから、ということではなくあくまでも相手本意。


結末に関して、しあわせではあるかもしれないけれど、ちょっぴり不健全なのかも、という印象です。

ネタバレになってしまうので具体的なことを言及するのは避けますが、「初恋」を大事にするあまりその「初恋」は叶わない。

そういう意味でも恋愛感情としては、あまりにも綺麗すぎる、と感じました。



いろんなことばを飲み込むことが許されることなのかどうかは立場や考え方によって大きく変わるかもしれないですが、そんな風にお互いのことを思う人たちのしあわせを当たり前に願えるような世界であって欲しいな、と思うのです。