ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『美都で恋めぐり』

『美都で恋めぐり』  北夏輝

美都で恋めぐり (講談社文庫)


今回は北夏輝さんのこちらの本。

以前、『恋都の狐さん』が文庫化された時に読んだので、今作で2作品目になります。


タイトルを見て分かる通り、どちらも恋愛小説なのですがべたべたな恋愛もの、というよりはお話のスパイスとして恋愛を取扱っている、という感じ。


個人的には一風変わった登場人物たちの動きの方が魅力的だったりします。


今回の主人公は普通の女の子。

大学受験に失敗して大阪の大学に通うことになってしまい、高校時代から付き合っていた彼氏のカズくんと遠距離恋愛することになってしまう。


そして彼女の叔父にあたり、スキンヘッドで黒色のツナギやスーツしか着ない書道家の「黒衣」に何かとお世話になることになる。


黒衣と親しい間柄であるちょび髭大学教授の通称「殿下」や、美少年ながら何故かカツラを着用し女装をする大学生であり黒衣の書道の生徒でもある「サカイ」も交え、たこ焼き器を買いに出掛けたり、大阪城へ出掛けたり……。





まあ、ネタバレというか多分十中八九の読者が主人公の女の子とカズくんが近いうちに破局してしまうことを予想すると思うのですが、予想通り、離れ離れになってしまったのを機にあっけなく気持ちもばらばらに。


失恋によってご飯が喉を通らなくなってしまうくらいに打ちのめされてしまうんですが、黒衣やサカイのおかげでなんとか立ち直ります。

そしてそこから主人公の女の子とサカイの距離が少しずつ。


最後にはサカイが女性もののカツラを被るようになった理由も明かされるのですが、それがまたいい意味でとてつもなくしょうもない。

ある意味サカイの性格をよく表しているエピソードだと思います。




『恋都の狐さん』にも『美都で恋めぐり』にも言えることなんですが、私にとって北夏輝さんの作品の何が魅力かっていうと、文章読んでいるとめちゃくちゃその場所に行きたくなるんです。


実際に『恋都の狐さん』読んだ時に、すごく感化されて去年の夏、燈花会を観に行ったんですけれど、奈良公園に小さなろうそくのようなものが数え切れないくらい並べられていて、とても良い雰囲気でした。


……それと同じくらい人の数も多かったんですけどね(笑)


今回も大阪中心に奈良、京都のことが書かれているのですが、こういう時一緒に色んなところ回ってみたいなと思う人のことがふわっと過るかんじ、すごくいいですよね。

恋仲に限らず、面白いこと楽しいこと不思議なこといろんな記憶を共有できるということって多分、すごく幸せなことだと思うのです。


……色々な擦り合わせがめんどくさくて、行きたい場所にはふらっと1人で出掛けてしまうことが多いんですけどね(笑)


なんていうか、行きたい場所に旅行する、というのと、誰かと行く旅行っていうのは私の中ではちょっと別物だと思うのです。

1人カラオケとみんなと行くカラオケが別物、みたいな感じ。





この作品、全体的に軽やかで爽やかな雰囲気なので、関西の大学新入生の方は特にぺらっと読んで見て欲しいです。

きっと、いろんな所に出掛けたくなるはず。




それから思いがけないところで、狐さんが登場してきて嬉しいサプライズでした。

狐さんシリーズの続編、文庫化心待ち。