ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

あまりにもひねくれた。

『謎好き乙女と奪われた青春』  瀬川コウ

 
 
 
ひとまず、米澤穂信作品の「氷菓」シリーズと「小市民」シリーズが好きな方はこの本を読んでみていただきたい。
 
 
主人公の矢斗春一は、身近なところで日常的な不可解なことが起きる、ミステリを引き寄せる「体質」をもっている。
そんな春一のひとつしたの後輩である早伊原(さいばら)樹里は、春一の周りで起こる謎を目当てに「付き合いましょうよ」と告げる。
彼女にとっての青春は、恋愛でも部活でも勉強でもなく、日常にあふれる謎に触れ、それを解明すること。
 
 
もちろん早伊原さんは春一の人となりには一切興味がなく、ただ春一に引き寄せられる謎に興味がある。
言うなれば、たちの悪い千反田える(「氷菓」シリーズに出てくる)。
“私、気になります”と言わんばかりに、春一に謎解きを持ちかけるも、春一が持論を展開するころにはすっかり早伊原さん自身は真相にたどり着いている。
また、ごく一部の人を除く他人の前では猫をかぶり、愛想を振りまいている。
もちろんそれが被った猫であるということは気付かれていない。
それこそ外見は幼いものの復讐を愛する小佐内ゆき(「小市民」シリーズ)のように、かわいい顔して腹では何か抱えているタイプ。
 
 
 
一瞬でバラに代わる花束、物理的に不可能なはずのカンニング、短時間で学年ほぼ全員のアドレスを入手する方法。
そして春一の過去と彼はいかにして「体質」を得ることになってしまったのか。
 
なんとなく早伊原さんがそれぞれのヒロインを連想させるからだけではなく、この作品が謎解きだけに終わらずその謎にまつわる動機や主人公が描いたものとはかけ離れた現実がひと匙の苦みを含んでいるからこそ、「氷菓」シリーズや「小市民」シリーズ好きにお勧めしたい。
 
ただ主人公とヒロインが謎について討論しあうだけではなく、少なからず主人公は早伊原さんと出会うことによって謎と真っ向に向き合うことによって、その背後にある思いがけない現実に多少なりとも打ちのめされる。
 
もちろん今まで彼自身は「体質」のことを好ましく思っておらず、事なかれと目を背けてきたのだけれど、「体質」がきっかけで自身の手の及ばない事態に発展しかけたとき、過去と、「体質」とケリをつける覚悟をする。
 
こういう話が好きかどうかは完全に個人の趣味なんですけれど、この華やかすぎない感じがとても好みです。
 
 
 
 
 
とりあえず、6月に次巻が出るとか。
積読本が増えてしまう......。
 
いや、きっと積読本の仲間入りする前に、気になって読んでしまう。