ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『新訳 メアリと魔女の花』

『新訳 メアリと魔女の花』 メアリー・スチュアート 訳;越前敏弥・中田有紀

新訳 メアリと魔女の花 (角川文庫)

 

今夏に映画化される「メアリと魔女の花」の原作小説、新訳版。

www.maryflower.jp

 

予告PVを何度か見たのですが、魔法を描いているというところはもちろんのところ、魔女の花が「夜間飛行」と呼ばれているところにたまらなく心を鷲掴みにされてしまって。

200ページにも満たない程の短いお話でした。

それでおもメアリが魔法と出会い、冒険をする様がメアリの等身大の目線で瑞々しく描かれており、最後にはちょっとした驚きあり、と気が付けば本の世界に没頭していました。

物語の始まりと終わりでメアリの周りの環境が激変することはないのだですが、魔法をめぐる一件を通して大きく成長しているところがまた本当によい......。

 

 

※以下、一部ネタバレを含んでいます。未読の方はご注意ください。

 

 

 

あらすじ

姉と兄に比べて自身は何のとりえもないと感じていた内気な少女、メアリ。

夏休みに親元を離れてひとり田舎で過ごすことになるも、同年代の遊び相手もいないその場所はメアリにとって非情に退屈だった。

そんな時メアリは黒ネコのティブとの出会いをきっかけに、不思議な力を持つ花――夜間飛行を見つける。

庭のほうきに花の汁がつくとほうきは空を駆け始め、メアリは導かれるようにして魔女の学校へとたどり着く。

なし崩し的に自身の身分を魔法使いの名家と偽り、案内されるがまま校舎を回るメアリ。

そこで目にする様々な魔法はメアリにとっては驚きに満ちたもので――。

 

世界観がツボすぎる

魔法とか黒ネコとか夜間飛行とか。

もう、このみっつの要素だけで、どこまでも想像をたくましくしていけそう。

魔法使いの使い魔に黒ネコ、ってもはや定番のような組み合わせなのですが、やはり定番なものもそれはそれでいいものなのです。

さらに何といっても魔法の花が夜間飛行と呼ばれていることに、サンテグジュペリ好きの私は思わず体温上がってしまいます。

 

夜間飛行 (新潮文庫)

夜間飛行 (新潮文庫)

 

オムライスも好きだし、ハヤシライスも好きだし、そうなったらオムハヤシとかもう最強だよね、の心境。カレーハンバーグしかり。

 

退屈な日々を送っていたメアリが魔法と出会った場面、というのは、本当にメアリにとって鮮烈だったようで、まだ見ぬ世界に不安と期待の入り混じった様子に読んでいて本当にどきどきしました。

きっと私がこうして、魔法に対して抱いているような思いをメアリも心に宿したのかなと思うと、自然とにんまりしてしまいます。

 

 

メアリにとっての魔法

この物語では、魔法は必ずしも良いものではない、という立場で描かれていたのがとても印象的でした。

「やっぱりわたし、行かなくちゃ。それから、ここの玄関をあけるのに、呪文を使うのはだめね。いつもどおり、ふつうのやり方であけよう。たとえ時間がかかっても……」

p.119

 特にこの台詞。メアリの最終的な魔法に対する考えが表れている台詞だと思います。

 

この台詞を受けて、丁寧に暮らしていきたい、と思う。

魔法ではなく科学技術をもって世の中便利になって、色々な事を考えずに生活してゆくことができるようになったけれど、目先の利便性に飛びつかずに丁寧に生きていきたい、と。

もちろん何もかも原始的な生活に戻ろう、というのではなくて、何もかも頼り切って私にとって大事な何かを見落としたくないな、と思うのです。

今回メアリも魔法の力を最終的に手に入れることはなかったけれど、彼女はかけがえのないものをたくさん手にした。それこそ、魔法では得ることのできないものを。

 

 

そうやって日頃の中で時には時間をかけて遠回りをして、今日はなにか素敵なものとの出会えるかもしれないという期待で胸をいっぱいにしていたい。