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『君に出会えた4%の奇跡』

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『君に出会えた4%の奇跡』 広瀬未衣

君に出会えた4%の奇跡 (双葉文庫)

 

※ネタバレを含んでいます。未読の方はご注意ください。

 

 

 

あらすじ

結婚式を間近に控え、数年ぶりに京都に帰った灯里は、自宅で昔の日記帳を見つける。その日記には、虫に食われたように、不自然に1人の名前が抜け落ちていた。なんとか手がかりを探そうと、祇園祭で作った提灯に「コウ」という名を見つけるも、どうにもコウのことを思い出せずにいた。

ひと月に2回見ることのできる満月をブルームーンと言い、そんな満月の日には奇跡が起きるという。

そんな噂話に導かれるようにして、灯里は少しずつ17歳の7月にあった出来事を少しずつ思い出してゆく。

最後に明かされるのは、不思議な世界の構造と、ちょっとした素敵な奇跡。

 

 

随所に溢れる京都の魅力

灯里が夢に見る形で、過去のコウとのやり取りを思いだしていくのですが、京都の観光名所や町並みが丁寧に描かれていました。

実際に京都に足を運んだ回数よりも、物語の中で触れた回数の方が圧倒的に多くて、私の頭の中で京都は虚実入り混じった「素敵」で溢れた街になってしまっています。

そんな私の空想架空都市「キョート」にまたひとつ、いろどりが増えました。

氷の器で食べるかき氷......しぬまでにたべたい。

(つい先日の『天使は奇跡を希う』の感想でも同じようなこと言ってる......)

 

またコウに対して仄かな恋心を抱く灯里の心情と舞台装置としての美御前社の美容水の組み合わせがぴったりで、コウに見合うくらい「美人」になりたいと願う灯里の健気さが一層際立ってました。

さらに特筆すべきは、そんなことを気にする灯里に対してコウがかけた言葉。灯里の何もかもを肯定するような言葉。

私も誰かを褒めることがあれば、こういう風に褒めてあげたいとふと、思う。人や町並みに守られて、大切にされて、いっぱいの愛を受け取ってきた証なんだねって。

それが気取りすぎてないように響くのは、コウが真摯に目の前の灯里や世界と向き合っていたからなのだと思います。

 

 

実在世界と私たちが感知している世界

灯里の父が物理学者ということもあり、時折世界の見え方が物理学的に語られる場面がありました。

その中で印象に残っているのは、レイリー反射による空の青の話。

本来、波長の違いから青色よりも紫色が空が広がっているのに、人の目には青色の方が映りやすいため、青く見えるという話。紫色を知覚しやすい人には紫がかって見えるという話。

こういう話を耳にするたびに、途方もない未来を想像して眠れなくなってしまう小学生のような気持ちになる。本当の世界ってなんなのだろう、と。

(そうして結局、どうしようもなくて、自分の見えるように、思うように受け入れてしまえばいいやという結論に至るのだけれど)

 

それでも、結婚間近にコウのことを思い出した灯里は、何に価値を見出すのだろう、と考えたら少しだけそわそわとした。

コウは誰の記憶にも残っていない存在で、その思い出をひとりで抱えて、目の前の現実を生きていくしかないんだよ、と言われて、「確かにそうだね」なんてすぐに受け入れることができるか、なんて。

 

 

 

 

最後に明かされる世界のひみつ

文庫あらすじにあった「もしこちらの世界にもう一人の僕がいたら、必ず君を見つけるよ」という台詞から、既にパラレルワールドものの匂いを感じていたので、コウが別世界の人間だと明かされた時には大して驚きはありませんでした。

ブルームーンの力を借りて綺麗な世界を見てみたかったんだ、そうしているうちに灯里のことを好きになった、というコウの台詞に思わず、細田守監督のアニメーション映画の「時をかける少女」みたいだと思う。

(念のため注釈を入れておくけれど、~みたいだ、って言っても。パクリだとか類似品だとかそういうことを言いたいのではなくて、私のアンテナにはそういう引っかかり方をしたのだという喜びを書き留めておきたいのです)

 

宇宙スケールで見れば確率的には、自分のコピーのような人がいるという話。その話と「もしこちらの世界にもう一人の僕がいたら、必ず君を見つけるよ」という台詞が素敵な結末に繋がるとは思ってもいませんでした。

コウと婚約者はもちろん別人なのだけれど、見つけるよ、という言葉がこういう形で果たされるのは、なんだかとってもプラトニック。

コウと婚約者はそういえば、(当たり前かもしれないけれど)年齢も同じなのでは?? ということに最後の最後で思い当たる。

 

多分、この先、また灯里はコウのことを忘れてしまうかもしれないけれど、それでいい、と私は思う。

忘れてしまったとしても、あの日の出来事が完全になかった、ということはないのだから、灯里らしく、灯里の思う目の前の好きなものを思いっきり愛してしまえばいいよ、と思う。

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