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『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 12』

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 12』 大森藤ノ

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか12 (GA文庫)

 

 ※以下にネタバレを含んでいます。未読の方はご注意ください。

 

ダンまち」シリーズ12作目。

いきなりですが、この巻、ものすごく面白くて本当に一気読みでした......。『異端児』編が一段落して久しぶりにダンジョン探索回。

ダンジョンダンジョンしてるだけじゃなくて、色んなキャラクター達が熱い成長を遂げるし、新しいキャラクターも登場するし、引きも気になる形で終わってるし......かんぺき。

 

 

あらすじ

宿敵ミノタウロスとの死闘を経てレベル4にランクアップしたベルくん。

それに伴ってファミリアの等級も上がり、ギルドから周期的に遠征を義務付けられることに。

 仲の良いファミリアのメンバーにも協力してもらい、ダンジョンの「下層」到達を目標に探索に向かう一行。

そうして目的の階層までは、難なくたどり着けたものの、そこで待ち受けていたのは狡猾に冒険者を罠に嵌める『強化種』。

他のモンスターとは違う動きを見せる『強化種』を前に、ベルくんは仲間たちとはぐれ、パーティはたやすく壊滅状態に追い込まれてしまう。

 

ベルの心境の変化と成長

ランクアップにより、身体能力が向上しただけでなく、『異端児』を巡る一件を通して、精神的な成長を見せるベルくん。

「『偽善者』になるって、決めました」

というベルくんの言葉に思わずぐっとくる。

本当にこの巻のベルくん、情けなさのかけらもなくて、言葉や行動のひとつひとつに本当に胸が熱くなる。

パーティをベルくん自身が引っ張っていくのだという覚悟が随所に溢れている。

 

例えば、『強化種』に追い詰められ深手を追ってしまった千草を前に焦燥が滲み始めたパーティメンバーに対し、強気に発言を促す場面、本当にぞくっとしました。

「まだ、誰も死んでいない」

「!」

「 仲間みんながいます。 仲間みんなで考えれば、助けられる」

 自身の不安を押し殺して引っ張ろうとする姿も成長を感じるけれど、何より、いつだって仲間のことを信頼してるのが本当によい。

ベルくんは自身は完全無欠な存在でないことを自覚していて、切に仲間の力が必要だと感じている。

「下層」へ向かうに際し、レベル1のサポーターのリリは連れて行かない方がよいのではないか、という意見に対しての

「できるなら......みんなと一緒に、強くなりたい」

(略)

「 仲間ファミリアのみんなで、前に進みたい」

 という相変わらずなベルくんの台詞にはもう、言葉が出ない......。

お人好しだから、というだけでなく、きっと今までもこれからも仲間たち全員の力が必要だと感じているからこその台詞だと思うと。

 

 

覚醒する冒険者たち

そんなベルくんに引っ張られるような形で、他の仲間たちも覚悟を決める。

  ミコトの居合や、春姫の複数を対象にすることが可能になった階位昇華魔法はもちろんですが、なんといっても今回の一番の成長を見せたのはリリ。

彼女の頭脳を生かして、指揮官のポジションにつくのですが、奇しくも以前に求婚されたフィンを引き合いに出されていて思わずにやっとしてしまう。

そんなリリが苦渋の決断を下す場面が本当に今回のお話の中でいちばん印象に残っています。

圧倒的な力を見せる『強化種』を前になすすべなく、他の冒険者の「囮になるから、ヘスティア・ファミリアは生き残って、このことを地上に伝えてくれ」という提案を前にした時の葛藤。

「あの人なら、見捨てない!」

脳裏に蘇るのはとある迷宮の光景だった。

恐ろしい巨大な蟻の大群に取り囲まれるリリを助けた、とても熱くて美しい炎の雷と、差し伸べられた少年の手だった。

「あの人は、私を見捨てなかった!」

目じりから涙の欠片を飛ばしながら吠え続ける。

 

 

リリが本当になりたいのは、追いかけたいのは、自分を救ってくれたあの背中だ。

汚泥にまみれた自分を見捨てなかった、あの優しい手だ。

「だから、私も......! リリも変わるんだって‼」

 もう、この場面本当にすきすぎて、なんなら見開き1ページまるっと引用したいくらい。

こうして読み返して、引用のために文字打ち込んでるだけでも思わず目頭が熱くなります......。

ベルくんの信頼をただただ受けるだけではなくて、ちゃんとそれに答えようとするのがよい。

とりわけ、リリは他のキャラクターに比べコンプレックスを抱えているだけに、彼女の覚悟の言葉に本当に「そうだ! 行け!」と幼子が素直にヒーロー、ヒロインを応援するような気持ちになる。

 

そうして、1度ははぐれてしまったものの、ピンチの場面で仲間と再び合流する英雄、もといベル。

新たな境地にたどり着いたベルくんが『強化種』に繰り出すのは、自身がミノタウロスを倒すべく編み出した新しい技。

ファイアボルトをヘスティア・ナイフに放つと共にその状態で、炎とナイフにチャージをかけた、すべてを灰燼に帰す炎熱の刃。

かっこいい......。 

 

 

新たなハーレム要因『異端児』と気になる幕引き

水流のダンジョンで仲間とはぐれてしまったベルくんを仲間と合流できたのは、新たな『異端児』マーメイドのマリィのおかげ。

天真爛漫な性格で喜びのまま身体を寄せるマリィに思わずどぎまぎしてしまうベルくんの様子に「あ、これ、いつもの情けない方のベルくんだ」と内心微笑む私。 

『異端児』の結末がどこに向かうのか、今後気になっている点のひとつです。

 

そして、もうひとつ気になるのは今回の幕引き。

リヴィラの街の外で殺人が起こり、犯人はどうやら賞金首の【疾風】だという。 

リューさん......?

事情があれば彼女ならやりかねないという気持ちと、人違いではないかという気持ち、両方あって、とりあえず経緯が分からない以上は、本当になんとも言えない......。

本編と関連するかわからないけれど、これはリュー外伝も読まきゃいけないやつだ......ソード・オラトリアもまだ積んでるけれど......。

 

 

 

 

 

【「ダンまち」シリーズの感想はこちら。】