ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『天使は奇跡を希う』

『天使は奇跡を希う』 七月隆文

天使は奇跡を希う (文春文庫)

 

ぼくは明日、昨日のきみとデートする』で著名の七月隆文さんの作品。

表紙イラストを担当されているのは、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『君の名は。』のキャラクターデザインなどを手がけている田中将賀さん。

主人公の新海、という名字に思わず「新海誠監督のオマージュかな?」と。

 

 

今治の高校に通う新海良史のクラスにある日、優花という名の少女が転校してきた。

そんな彼女の背中には真っ白な翼が。しかし、その翼が見えているのはどうやらクラスで良史だけらしい。

彼女の正体を知ってしまった良史は、天国に返してほしいという彼女の願いを叶える手伝いをすることになる。

 

 

 

 

※以下、ネタバレあり。未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

物語の前半は、優花に良史が振り回される形でふたりは地元を巡ることに。

過去に七月隆文さんの作品はいくつか読んでいて、七月さんの作品のことだからきっとこの何気ない明るいできごとが後々重要な意味を持ってくるに違いない......と覚悟しながら読んでいたのですが、案の定。

なるほど......今回はこうなったか......と感嘆。

読みながら、きっと良史にとって優花は旧知の仲だったってパターンだな??? と根拠もなく予想していたのですが、まさか良史が既に亡くなっていて、彼を生き返らせるために優花が制約の中で精一杯できることをしている、とは思いませんでした。

 

彼女が錠の代わりに手でハートを作ってみたり、タオル工場で涙したり、真実が明かされてから本当の意味が分かる行動がいくつかあるのですが、その中でも、ゲート前で職員さんに過去に似たようなことをした人がいないか必死に問いかけていたことがいちばん印象に残っています。

どれもこれも必死だったのは彼女自身の思い出のためではなくて、すべては良史のためだったんですね。

 

 

 

そして彼らの恋について。

成美と優花の関係が拗れてしまったことも含めて、諸々、誰が悪いというわけではなく、少しずつ運が悪かった、としか言いようがない、と私は思った。

もちろん、そんなひとことで片付くようなことではないけれど、普通だったら時が解決してくれるような些細なつまずきも、良史の転校や死によってその機会を完全に失ってしまった。

少し素直になれなかったことの対価にしてはあまりにも不幸だ。

成美は良史に告白する時に優花についての嘘を吐くべきではなかったし、

優花は自分の気持ちを偽り続けるべきではなかったし、

良史は安易に告白を受け入れるべきではなかった。

彼らの嘘は、計算づくの嘘なんかではなくて、自分に自信がなかったからつい、口から出てしまった嘘だ。

もちろん、物語の上では「するべきではなかった」なんて彼らの行動を否定できるけれど、現実での私は、多分他の人がそうしているのと同じくらいには、これと似たような嘘をいくつも吐いてきたし、色々と誤魔化してきた。別に恋沙汰に限らず。

 

 

正直、結末を迎える頃には何らかの形で幼馴染4人の誰かが欠けてしまうのではないかと、大団円を願いながらも心の片隅でどきどきどしていた。

それでも最後には彼らの元には何でもない日常が戻ってきて本当に良かったと思う。

今回の良史を生き返らせるに当たって、自分が決断して行動を起こしたということが、巡り巡って、胸を張って生きるための糧になればよいな、と思う。

できることなら、もう二度とあんな嘘を吐かなくて済むように。

 

 

 

 

 

 

最後に。

読みながらにして薄々自覚はしていたけれど、読み終わってなおさら今治に行ってみたくなるやつだ!

特に作中に登場したかき氷屋さん、簡単に検索してみたらどうやら実在するようでぜひとも行ってみたい......。

かき氷フリーク、というわけではないけれど、なんだかかき氷屋さんに対しては他のスイーツ以上に熱意を注いでしまう。

なんていうか、ソーダ水よりも瓶ラムネの方が少し特別に感じてしまうのに似ている。

四国自体が私にとって未踏の地なので、今治のかき氷屋さん含め、観光地諸々、しぬまでに行きたい。