ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『少年Nのいない世界 02』

『少年Nのいない世界 02』 石川宏千花

少年Nのいない世界 02 (講談社タイガ)

 

講談社YAにて刊行されている『少年Nの長い長い旅』と連なる「少年N」シリーズ。

「長い旅」では異世界に飛ばされた野依を主人公とした冒険活劇として描かれているのに対し、その5年後を描いた「いない世界」シリーズでは打って変わって所々重苦しくダークな雰囲気が漂う。

 

この物語のギャップと、「この先に何かとてつもなく怖ろしいことが待ち受けているのではないか」という得も言われぬ不安感にすっかり虜の私。

普通だったら純粋にわくわくとした気持ちで読むことのできるはずの「長い旅」シリーズも、その後に「いない世界」での出来事があると知っている以上、純粋に喜びを主人公の野依とともにすることができないのです。

そして、タイトルにある少年Nが野依だとするのなら、「いない世界」では彼は文字通り存在しないということになってしまうということがより一層不安をかき立てる。

 

今までのシリーズ作品の感想はこちら。

「いない世界」シリーズ

『少年Nのいない世界 01』 - ゆうべによんだ。

「長い旅」シリーズ

『少年Nの長い長い旅 01』 - ゆうべによんだ。

『少年Nの長い長い旅 02』 - ゆうべによんだ。

 

 

 

今回の主だった登場人物は、なんてといっても長谷川歩巳くん。

ここに描かれている彼の変化や葛藤、そして成長がすべてだと言っても過言ではないくらい。

過酷な労働環境も相まって、「そうなること」を半ば強制されてことによりすっかりたくましくなった彼ですが、実年齢にして17歳だということに改めて驚いてしまう。

 

「長い旅」が刊行されているレーベルは児童向けということもあってか、「長い旅」での試練や苦労は前向きにとらえることができるのだけれど、「いない世界」で描かれている苦労はなんというか地に足がついていて、息苦しさを感じてしまう。このギャップたるや。

 

今回、そんな苦労をしながらも今まで世話になって働き続けた建設会社に残るか、かつての世界で同級生だった二葉の誘いに乗り、彼女の仲間とともに生きていくのか選択を迫られる。

異世界での生活と、決断をすることにためらいがちな歩巳の様子が丁寧に描かれていました。

結論から正直に言うと、私、最後の最後まで歩巳は今まで通りドムド建設で働き続ける選択をするのではないかと思っていました。

確かに今まで、ひとことでは言い表せない程苦しい思いをいっぱいしてきたかもしれない。でもそんな歩巳の苦労がようやく芽を出し始める。そんな折に二葉からの誘い。

よりによってなんて残酷なタイミングなのだろう、と、まさに読んでいる最中の私は思った。

でも歩巳にとって転換点の時期だからこそ、彼は精一杯悩む機会を得るのかもしれないな、と今は思っている。

 

ドムド建設で過ごした時間を棄てるでもなく、目をそらすでもなく、彼なりにちゃんと受け止めて、その上で二葉たちといることを選べたのはとてもよいことだと私は思う。

多分、彼なりにちゃんと覚悟を決めたのだ。

 

 

 

次に、前回ちょっと不穏だなと感じた二葉のことについて。

今回、二葉が敬愛なんて言葉じゃ足りないくらい並々ならぬ程に信頼している者の存在と、かつての世界からきた二葉たちの身柄を確保しようとしている者がいるらしいということが明かされる。

二葉たちはそんな暗躍する彼らよりも先に、同級生たちにコンタクトを取らなければならない。単純に言えば二葉たちとその組織は敵対する形になる。

作中、菅沼文乃の現状にも触れられる場面があるのですが、きっと彼女は現在、二葉とは違う組織に身柄を引き取られている様子.......。

実を言うと、二葉が信頼しているエースという人物を私はまだ信用しきれていない......。二葉の盲信でなければよいのだけど。そして、エースはつまるところ、身体はこども、頭脳はおとな状態らしいのだけれど、彼の身に何があったというのか。アポトキシン4896かな????

 

 

 

次の「いない世界」の物語で何が明かされるのか楽しみ過ぎる。

楽しみ、というか、気になり過ぎる。

今回歩巳に関して掘り下げられてように、文乃について掘り下げられるのか。

異世界に飛ばされた7人のうち、「いない世界」ではっきりと登場していないのは、野依と和久田くん。彼らは間違いなくキーパーソンになり得るので、どんな形で登場するのか(あるいはしないのか)本当に楽しみ。