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『最良の嘘の最後のひと言』

感想 河野裕 創元推理文庫

『最良の嘘の最後のひと言』 河野裕

最良の嘘の最後のひと言 (創元推理文庫)

 

よもや河野裕さんの作品が創元社推理文庫から刊行されるなんて夢にも思っていなくて、第一報を目にした時にはとてもわくわくしました。

物語の内容はコンゲーム――登場人物たちが騙し合うミステリ。

私の中で河野さんの文章は、水彩絵具みたいで余韻がとても印象的だったのですが、今回は情報量がぎゅっと詰まっていて、こういう作品も書けるのだとただただ唖然、茫然。

なんだか読んでいてすごく馴染む、と思ったら、雰囲気が伊坂幸太郎さんの文章に似ているのだと気が付きました。作中、演出として象徴的に「ジ・エンターテイナー」が繰り返し流れるあたりとかも。

(......というより、2人に影響を与えた村上春樹作品っぽい、というのがより正確なのかもしれませんが、あまり読んだことがない故)

 

 

超能力者1名を年収8000万にて雇うという告知に対して、最終試験までたどり着くことのできた7名。

限られた時間、行動範囲内で、1通の採用通知書を巡って騙し合う。

超能力、と言っても殺傷能力のある血みどろバトル展開になるのではなく、あくまでも頭脳戦。正社員としての肩書はいらないけれど協力する代わりにお金は欲しい、という立場が生まれることにより関係や思惑を複雑にしているような気がします。

予め能力によって、正社員見込みのある順にナンバーが割り振られているのですが、ナンバリングされていてひとつの席を奪い合うとか、『未来日記』っぽい! と興奮する私。

未来日記』は、がっつり殺し合いサバイバルでしたけれど。

 

 

 

※物語の展開について、核心には触れていませんが......というより複雑に動き過ぎて書きようがないので書きませんが、内容に所々触れているので未読の方はご注意ください。

 

 

分かり切っていることなので言うまでもないかもしれませんが、はっきり言って嘘つきしかいないです。

読者として騙す騙されるどころじゃなくて、怒涛の展開に置き去りになりそうなくらい。

え? あの人がこうなって? でも、さっきのは嘘で? っていうのもまた嘘で? おお?? みたいな。

まさに舌の根の乾かぬ内に。後になって本当に登場人物たちの立場が二転三転、七転び八起きなので、勢力図なんて書きながら読もうものならきっと紙の上が線で真っ黒になるくらい。

あんまり物語の展開について話をしてしまって、まだ読んでいない方の興を削いでしまってもあれなので。とりあえず、みんな嘘つきです。疑うだけ無駄なくらい、嘘つきです。

 

 

 

そしてタイトルにもある「最良の嘘」について。

もちろん、こちらも大きな物語の鍵、主要人物の市倉がなぜこの採用試験に参加したのか、というところに関わってきます。

この嘘に関しても、最初に私が「あ、こういう嘘かな?」と思ったところから逸れて、思いもよらなかった優しい着地をする当たり、やっぱり河野裕さんの作品だ! と心がふわっとしました。

最良の嘘に関するみっつの条件、というのが作中で語られる場面があるのですが、みっつ目だけが終盤になって明かされる。

もう、その条件が明かす時の市倉の表情を想像するだけでなんとなく幸せな気持ちになれそう。

 

ひとつ目は、自分のための嘘ではないこと。

ふたつ目は、相手が信じるまで嘘をつき続けること。

みっつ目は、ネタばらしでだました相手と一緒に笑える嘘であること。

 

何よりも大前提として、その嘘をつく相手と些細なことで笑い合えるような間柄である、そんな相手が隣にいる、というのが、よい。

 

ふたを開けてみれば多くの参加者が、最終試験に挑んだ目的を果たしている、という点もなんだか大団円、という感じがします。

 

 

 

最後に少し。

今回、表紙イラストを担当されているしおんさん。

三秋縋さんの『恋する寄生虫』の表紙イラストも担当されていたんですね。

これは、今後、私(の財布)を苦しめ続けるイラストレーターになるかもしれない......。要注意リストにその名を留めておこうと思います。

 

恋する寄生虫 (メディアワークス文庫)

恋する寄生虫 (メディアワークス文庫)

 

 

 

 

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