『押絵と旅する美少年』 西尾維新
講談社タイガより美少年シリーズ、4作目。
このシリーズ、謎が発生して解決、という流れが本当にシンプルで、登場人物も独特で、一冊当たりのページ数も多くないのでさくっと読めて、よい。
巻を追うごとに美少年探偵団とは立場が異なる団体、人物が登場してきて、(その日が来るかどうか分からないけれど)一堂に会する日をいまかいまかと待ちわびてしまう。共闘なり敵対なり。
今回新たに登場するのは、口の悪い座敷童、もとい幼い少女。
座敷童という妖怪をご存知だろうか。
なんて風に切り出すと、間違って物語シリーズのほうを買ってしまったと思うかたもおられるかもしれないけれど、大丈夫、安心して欲しい。
という一節に口惜しいけれど思わず顔がほころんでしまいました、まことに不本意ながら。
シリーズをここまで読んできた方なら、この少女についてなんとなく心当たりがあるはず。
ちなみに私は、美声のナガヒロ先輩は、今後ロリコンに加えてこんな風に罵られるのがすき、とかいう罪深い属性を背負うことになるのか......とかなしい気持ちに。
それから彼の声音を変えられるという説明を見る度に「あ、『セクシーボイスアンドロボ』のやつだ」と思うので、そろそろ私の中でアイデンティティーを確立させてあげたい。
この記事の冒頭で一堂に会する日を心待ちに云々みたいなことを書きましたが、壮大な下準備に思えて仕方がないのです。
もちろん毎回毎回、謎としてオチがついているのですが、それ以上に美少年探偵団と新たな登場人物たちの関係についてのデティールが細かい。
今回の少女は、ナガヒロ先輩の許嫁にして、美少年探偵団への入団を断られたという過去を持つ。
団長であるところの美学のマナブが彼女の入団を断った理由がおっしゃれー、というか個人的にすごく粋だと思うのです。
そして彼女が、探偵団の活動拠点である美術室に巨大な羽子板を出現させた理由。
彼らが小中学生であることを忘れてしまうくらい。
マナブは何かと突拍子もないことをやらかすキャラクターとして描かれているけれど、こうして要所要所はきっちりと心得ているあたり、流石はリーダーといった感じ。
女性ではなく、乙女だから。その乙女たる所以もちゃんと理解している当たりなかなかに食えないのかも。
次回は、冬季合宿の一環として元教師の永久井こわ子先生を追って無人島に赴くことになりそう。
以前の物語で登場したものの、まだ彼女についてよく分かっていないので、探偵団とどんなやり取りをするのか楽しみ。
昔からこうだったのか、私の視点が変わったのかどうか分からないのですが、最近やたらと少年探偵団含め江戸川乱歩作品をオマージュ、パロディにしたあれやこれを見かけるような気がします。
乱歩作品を読んでいないことを、この美少年探偵団シリーズの感想を書くたびに悔いている気がしますが、見計らったように新潮文庫nexから綺麗な表紙で乱歩作品を刊行するものだから、書店で見かける度ににらめっこしてしまう。
いずれ手に取ってしまうことは想像に難くないけれど、その気になればいつでも読めるという安心感から、随分先になってしまいそう。
それこそ、積読本の量が大いに減らない限り。
......詭弁じゃ、ないです。