『浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は今世こそ幸せになりたい。』 友麻碧
ふらりと立ち寄ったいくつかのブログで紹介されているのを見かけ、物語の設定も私好みだと思ったので。
そういえば以前にコメントで同著の別シリーズもおすすめされてたんだった、と「かくりよ宿飯」の一巻とこちらを一緒にレジに持っていきました。
かくりよの宿飯 あやかしお宿に嫁入りします。 (富士見L文庫)
- 作者: 友麻碧,Laruha
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/富士見書房
- 発売日: 2015/04/12
- メディア: 文庫
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浅草に住む高校生の茨木真紀と天酒馨の前世は夫婦であり、平安時代の大妖怪、茨木童子と酒呑童子。お互いに前世の記憶と人間外れな霊力を持って生まれ変わった二人。
馨は努めて普通の高校生として過ごそうとするも、真紀の方は持ち前の性格から浅草周辺の妖怪の騒動に首を突っ込んでしまう。
ちょうど最近読んだ妖怪もの(?)ということで城平京さんの『虚構推理』と無意識に色々と比べてしまったのですが、
『虚構推理』でおぞましいものとして描写されていた河童が、こちらでは「あぎゃー、鞭打ちやめるでしゅー」とか言っててあまりにも緩すぎて思わずふふっとなってしまいました。
タイトルに「鬼嫁」とあるるのですが、作中、真紀が馨を尻に敷いているような印象はほとんど受けず、元気でよく食べる真紀の我儘を渋々といった体で馨が受け入れるというなんとも仲睦まじい......。
馨はフッと鼻で笑うと、こちらに向き直り「はっけよーい」と両手を広げた。
私は思わず満面の笑みになって「のこった!」と馨の胸に飛び込み、馨の腰をぎゅっと抱きしめる。p.214
こちらが、ベストオブ「真紀ちゃんと馨くんがあまりにも眩しすぎて思わず手で顔を覆ってしまう一幕」です。ご査収ください。
この後照れ隠しなのか、馨くんが嫌味を言うところまで含めて非常に芸術点が高い。
とにかく離婚してやるだの、まだ現世では結婚してないだの、年季の入った夫婦漫才、すき。
物語全体の雰囲気としては河童の「あぎゃー」から分かる通りコミカルに作られているものの、真紀たちの人間と妖怪の狭間を生きるものとしての苦労などがそこかしこに散りばめられていてとても素敵な物語でした。
作中、真紀たちのような存在は稀有なのですが人間のフリをして生活している妖怪たちがたくさんいて、私を取り巻く日常生活の中だったらどこに妖怪たちの住まう余地があるだろう、といつまでも想像できてしまう。
何より、どの妖怪も本当に人間臭くて可愛げすら感じる程。
「あぎゃー」の河童、一匹欲しい。(正直私自身もびっくりするほどこのゆるい河童が大層お気に入りな様子)
どのキャラクターも好きだけれど、強いて挙げるならば彼氏に振られて雨降らしちゃう雨女さんがお気に入りです。
茨木童子酒呑童子としての前世の記憶を巡ってこれからも物語が動いていきそう。何より「四眷属」とかいう言葉、響きから雰囲気から何から何までカッコよすぎる。
このお話を読んでからというもの、酒呑童子と安倍晴明、源頼光を巡る戦いの元ネタ(?)の『御伽草子』(あまりよく知らない)がとても気になります。
そして妖怪要素はさることながら、真紀ちゃんがあまりにも美味しそうに食べるものだから、浅草をふらふらと食べ歩きたい欲がふつふつと沸いている。
本当に油断しているとお腹空いてきてしまうくらいどの食べ物の描写もきらきらしていたので、別シリーズの「かくりよの宿飯」も今から読むのがとても楽しみ。
......酒呑童子とかいう言葉の響きを耳にすると『俺の屍を越えてゆけ』(ゲーム内表記は朱点童子)を思い出さずにはいられない人、私だけではないはず。