『魔女と思い出と赤い目をした女の子 サクラダリセット2』 河野裕
新装版サクラダリセットシリーズ、2作品目。
今さらなのですが、奇しくも表紙イラストを担当されている方が『青の数学』シリーズと同じとろっちさんだったのですね。
こうして私の頭の中の「つみぶかいイラストレーターさんリスト」にまた1人増えてしまいましたね......覚えましたよ、その名前!!
シリーズ2作目のお話は、今回のみでもきっちりと完結しているのですが、1作目で登場された野良猫みたいな少女の正体に触れたり、今後の展開を期待させる終わりだったり、とても広がりのあるお話でした。
浅井ケイはできるだけ他の人が傷つかない方法で誰彼構わず救ってしまう。
きっとそれは、愛だとか優しさだとかそういう感情が介在するものではなくて、ケイにとっては信条なのだ。
今回だって最良の結果を見事に掴んでみせるけれど、ケイは過程に満足していない、いつだって弱さを実感している。
回りくどくても、自分が傷ついても、泥臭く最適解を模索するケイのことを岡絵里は否定している。
この岡絵里の気持ちも、私には十分理解できる。2年前の多少強引でもあっさりと救ってみせるケイに憧れていたところ、その憧れの対象の本人から間違っていたなんて言われたら。
きっとそれだけ岡絵里の重要な拠り所だったのだな、と思う。
魔女と呼ばれ続けた女性と佐々野さんの間で起こった一連の出来事とその結末を、ひとえに不幸だとか幸福だとかでくくることのできない曖昧な感じ。
それでも最悪ではなかったなと、力の抜きどころがあるような感じ。
そんな河野裕さんの物語がとてつもなくすきみたいです。
百点満点の幸福ではないけれど、白黒つけるならばきっと大多数の人が幸福だと名前をつけるような。
今回最後の方で、野良猫みたいな少女の名前について触れられるのですが、この少女も紛れもなく主要人物のひとりなのだとじわじわと実感を伴って思い出していく感覚が本当にたまらない。
これまでがそうであったように、ケイたちはこの少女に振り回されるような形になるのですが、今こうして思うと、ケイとその少女の他人に対する思いの根っこの部分はひどく似ているように思います。
……きっと、私がそう思う理由というのも、続きを読んでいくうちに共感していただけると思います。
それから、改めて、色々なものが階段島シリーズに似ていると感じます。
魔女、灯台、閉じられた空間……。
サクラダリセットを再度読み返すような形で新装版を追いかけているのですが、前だったら抱かなかったような色んな気づきがたくさんあって、幸せを実感します。