ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『猫と幽霊と日曜日の革命 サクラダリセット1』

『猫と幽霊と日曜日の革命 サクラダリセット1』  河野裕

猫と幽霊と日曜日の革命 サクラダリセット1 (角川文庫)

 

大好きなシリーズ作品が角川文庫にて装いを新たに刊行されるということで。

 

既にスニーカー文庫から出ているサクラダリセットシリーズを読んでいるのですが、もう一度お話を通してお気に入りの言葉をひとつひとつ拾い上げていきたいな、と思い。

このサクラダリセットシリーズが初めて読んだ河野裕さんの作品なのですが、それこそ、新潮文庫nexのレーベル立ち上げが発表され、『いなくなれ、群青』というタイトルだけで心撃ち抜かれ、新潮文庫nex刊行が待ち切れず既に刊行されていたサクラダリセットシリーズを手に取った記憶があります。

 

 

その直感がどんぴしゃりと当たり、サクラダリセットシリーズの、というより河野裕さんの文章に甚く惹かれてしまい、今に至ります。

今回、表紙イラストを担当されている方は変わっているのですがキャラクターの雰囲気は踏襲しているのがなんだか嬉しい。

 

気がつけば実写映画化が発表され、アニメ化企画も進行中だそうで。

アニメ化企画、アニメの雰囲気にもよりますがもしかしたら人生初のアニメDVD,Blu-rayを買うまであるかもしれないくらい、すきな作品。

 

サクラダリセットシリーズ。

あらすじを話せば、世界を3日間巻き戻す能力を持った女の子と、巻き戻す前の記憶を保っていられる男の子と、種々の能力者を抱える咲良田という街を巡る物語、という「時間SFもの」という印象を受けるかもしれません。

(……というより私も最初はそう思っていました)

確かにどんな風に能力を使って世界を変えてゆくのかという面白みがあるのですが、それよりも主人公の浅井ケイと春埼美空と彼らを取り巻く登場人物の心の動きが何よりも丁寧に書かれていて。

 

 

 

何より主人公のケイの考え方が本当に私の性に合っていると言いますか、琴線に触れる、と言いますか。

初めてサクラダリセットシリーズを読んだ時の影響を強く受けていて、一周回って今回それを実感しているだけなのかもしれませんが。

 

例えば作中でケイと春埼がお祭りで食べるりんごあめの味について話をする場面があるのですが、こういう「限定的な幸せ」みたいな考え方が肌に合うのです。

限定的な幸せ、と言いますか、こういう「りんごあめは夜にとっておく」というような些細なことを大事にしていく感じが。

 

 

それから。

「僕は神さまになりたい。いちいち人に試練を与えたりしない、人間不信じゃない神さまに。お腹がすいている人にはパンをあげて、悲しんでいる人は幸せにする。毎日、そんな仕事をして暮らしたい」

きっとそれは人の為なんかじゃない、もっとエゴイスティックな理由で。世界中から悲しみがなくなればいい。

p.110

 

この場面が今回の中ではいちばんすき、かもしれないです。

ただ、取り留めもなく他愛もない話をする、という場面なのですが、誰かの幸せを願うのはその誰かの為なんかではなく、願う人のただの勝手な願いなのだということ。

もちろん見返りなんてものは求めていないし、ただただ毎日が穏やかであって欲しいということ。

ケイは過去の出来事に基づいてそのような考えを持っているのですが、それが正しいとか正しくないとか健全だとか不健全だとかそういうことは抜きにして、私はこの感覚を大事に抱えていきたいと思っている。

 

なんていうのかな、

幸せであれ、と強制するものでもないし、増して「優しさ」なんて綺麗な言葉で飾られるような感情でもないのです。

 

 

 

 

今回、シリーズ全7作品、毎月刊行予定ということで、表紙がどのような感じに仕上がるのかも含めてとても楽しみです。