『トランプソルジャーズ 名探偵三途川理 vs アンフェア女王』 森川智喜
講談社タイガより名探偵三途川理シリーズ。
ちょっとした設定を独特にひねってミステリーに仕立て上げる物語なのですが、私の中では、主人公のあくの強さがすごくクセになるシリーズで、相変わらずの三途川理の扱いに所々笑ってしまう。
それでも、今回はシリーズ通して出番が多い方だったね、よかったね!
今までのお話に登場してきた三途川理と比べて、幼い頃の三途川理が登場する今回。
不思議の国のアリスよろしく、穴に落っこちた三途川理少年は、その先の魔女が支配する世界で時計屋のウサギに出会い、意志を持ったトランプを使って魔女の配下とゲームをすることになる。
まずはじめに、己の身を賭けて神経衰弱が行われることになるのですが、トランプも魔女の配下ということもあって、トランプが言葉を発し、自らの数字を申告するため挑戦者側に勝ち目はない……。
ただ、その難局をあっさりと乗り越えてみせるのが三途川理。
たとえばアンフェアをぶちやぶるほどの卑劣漢であれば……。
卑怯イカサマなんでもありの卑劣漢であれば……、どうだろうか?
p.23
冒頭でいきなり地の文で遠回しに「卑劣漢」呼ばわりされる主人公にげらげら笑いそうになる私。
身近なトランプゲームにひと匙風変わりな設定を加えただけで、こんなにいろんなゲーム性が変わるのが新鮮でした。
神経衰弱に始まり、2人ババ抜き、ポーカー。
神経衰弱は、問いかければ探している柄のトランプが自ら申し出る。
ババ抜きは、引き抜こうとしているカードにジョーカーか問いかければ答えが返ってくる。
ポーカーは、トランプ自らが動いて自身に好カードが勝手に入ってくる。
三途川理の頭の回転が速かったから、圧倒的に不利な状況のゲームも勝てた、というよりそれに加えてやはり卑劣漢だから勝てたのだな……と数々の迷勝負を振り返ってふと思う。
前回の最後の最後で存在が仄めかされた姉の存在ですが、今回しっかりと登場します。
三途川理と同じくめちゃくちゃ最悪な性格してる上に、姉弟2人揃って罵倒しあう始末。なんていうか、本当にそっくり。
シリーズ通して読んでいる方なら分かると思うのですが、卑劣な悪の存在が増えようと結局悪は去りゆくのがこのシリーズ。
どれだけ自信満々に講釈たれようとなんか、それが虚しく響いて聞こえるのが一周回って面白い。完全に三下のそれだよ、って本人たちに言ってあげたいけれど、言ったら卑劣な仕返しに会いそう……。
(卑劣という言い回しがいたく気に入った私)
今後、あの2人が天変地異でも起きて手を組むことなどあるのだろうか……。
それは末恐ろしいことではあるけれど、何故だろう、小物が噛み付いてきた、くらいにしか思えないのは……。
本当に、なんていうかぼろくそに言っている私ですが、彼のこと心の底ではたまらなくすきなのですよ。
病みつき。言うなれば珍味。
(ほめてます)
三途川理が登場して、さも悪人のようにけけけ、と笑うのを見るとなんか安心するのです。