ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

今年もまたナツヨムの季節が来たね。【夏の文庫フェア ナツヨム2016】

出版社や取次、書店など本に関わる仕事を人たちが、毎年決められたテーマに沿って選書する夏の文庫フェア、ナツヨム。

北は北海道から、南は沖縄まで。全国の書店で開催されていて、手書きの帯についつい目を奪われてしまいます。

 ――なんて記事を寝かせていたら9月になってしまいました......。

 店舗によっては9月もナツヨムフェアを展開している店舗があるので、実際にフェアが行われている店舗や期間はこちらのTwitterアカウントを参考にしてくださいませ。

twitter.com

 

 

 

今年のテーマは「色」!

毎年テーマが変わるので、昨年とはすべて違う作品が並ぶのが魅力のひとつです。

この選ばれた作品のラインナップが私の読んだことのある作品もあれば、初めて見るような作品もあって、そのバランスが本当に絶妙で。

「色」のテーマで私にとっては少し意外な作品が選ばれていたり、もちろん共感できる作品もあったり、ラインナップを眺めるだけでもわくわくしてしまいます。

近隣の店舗でのフェアが終了してしまった場合でも、以下の選書リストからどんな本が選ばれた確認できるので是非。

togetter.com

 

 

 

 書店でずらっと並ぶ帯のついた本たち眺めていて、ふわっと動いた気持ちを書きつけておきたいので、「色」というテーマを踏まえたうえで今年のナツヨムフェアのラインナップを見た雑感を少し。

 

宵山万華鏡』 森見登美彦

宵山万華鏡 (集英社文庫)

宵山万華鏡 (集英社文庫)

 

 ああ、これはやられた、とつい思ってしまった作品の一つ。

京都の祇園祭宵山を描いた、ちょっぴりファンタジックな雰囲気が漂う森見登美彦さんの作品なのですが、この虚実が入り乱れる様が「色」というテーマで見るとより一層鮮やかに映えるように思えるのです。

確かにこれも「色」だ! 万華鏡ね、なるほどね! と体温上がってしまいました。

 

 

『カラフル』 森絵都

カラフル (文春文庫)

カラフル (文春文庫)

 

 今年のテーマが「色」だと発表された時、青とか赤とかそういう直接的に色の名前が入った作品を思い浮かべたのですが、直接的であるにもかかわらずこういう風に期待を裏切ってくるとは思ってもいませんでした。私にとっては本を読み始めた頃に触れた作品でもあるので、ちょっぴり懐かしい気持ちもあったり、意外なところで出会った喜びもあったり。こういうことがあるから、本当にこれからもナツヨムフェアが楽しみで仕方がない。

 

 

『退出ゲーム』 初野晴

退出ゲーム (角川文庫)

退出ゲーム (角川文庫)

 

つい最近アニメ化され、実写映画公開も控えているハルチカシリーズ。 

吹奏楽部員であるハルタとチカを巡る青春ミステリ連作短編。

これは、帯を見る前から「きっとあの話のことだな」と思って手に取って帯を見てみたらどんぴしゃり、で嬉しくなってしまいました。

この「色」にまつわる話――エレファンツブレスや真っ白に塗られたルービックキューブの話は、ハルチカシリーズの中でも私の大好きなお話のひとつなので、とりあえずこの『退出ゲーム』だけでも読んでもらいたい......。

 

 

『夏のバスプール』 畑野智美

夏のバスプール (集英社文庫)

夏のバスプール (集英社文庫)

 

 こちらは、私とは違った観点で選ばれていたので触れておきたくて。

(手元に実際の帯があるわけではなくうろ覚えなので違っていた場合、申し訳ないのですが)選者の方は青春という部分をプッシュされていましたが、私にとってこの作品はトマト色。

もう、私の中ではこの作品と言えばトマト、と言ってもいいくらいの。

冒頭の、主人公の少年が少女にトマトを投げつけられて、シャツが真っ赤に染まってしまう場面がそれほど印象強く残っています。そしてただこれが明るく眩しいだけの青春小説じゃないっていうのがなんとも......。この作品に関しては昔の私が感想記事を書いていた、はずなのでよろしければ。

shiyunn.hatenablog.com

 


 

 

 

 

 

そして、僭越ながらもしも私が「色」をテーマに文庫本を選ぶなら。

まず今まで読んできた小説を思い返した時に、『赤×ピンク』(桜庭一樹)や『いなくなれ、群青』(河野裕)など色の名前がタイトルに入った作品がいくつか思い浮かんだのですが、天邪鬼というかせめてもの意地というか、それでは面白みに欠けるということで色の名前がタイトルに入っていない作品を頭の本棚の中から引っ張り出してみました。

 

『放課後スプリング・トレイン』 吉野泉

放課後スプリング・トレイン (創元推理文庫)

放課後スプリング・トレイン (創元推理文庫)

 

 福岡の街に暮らす女子高生が主人公の、日常の謎ミステリ作品。

親友とお揃いだという彼女の髪留めのカンタロープビーズのことが思い浮かびました。

光によって様々な色に変わるというカンタロープビーズと同様に、彼女が出会う日常の様々なことが、切り取り方によって色合いが鮮やかに変化してゆくのが印象的な作品でした。決して大きな事件は起こらないけれど、きっと彼女にとってはそのひとつひとつがかけがえのないものになってゆくのだという柔らかい雰囲気に春の午後の陽だまりのようなあたたかさを感じました。ぽっかり空いたゴールデンウィークの昼間にふわりと湧き出てくるちょっとした万能感にも似た何か、みたいな。

 

 

『葉桜』 橋本紡

葉桜 (集英社文庫)

葉桜 (集英社文庫)

 

 橋本紡さんの恋愛小説。

恋愛小説の色、と聞かれると暖色だったり赤がかった色のイメージを抱いてしまいがちですが、このお話はそれとは少しだけ違っていて。

「色」ということを念頭に置いて、今まで読んできた小説をざっと見まわした時にこのお話を読んだ時の印象がとても鮮やかに訴えてきたので、うまく言葉にできないのですがこちらの作品を挙げさせてもらいました。

表紙のイメージに引っ張られている部分も大きいのだと思いますが、主人公の女子高生が抱いた恋心の変化や行きつく先と葉桜というタイトルがすごくぴったりだと感じています。葉桜の青々とした色はもちろんのこと、初夏の爽やかな風や陽光や、匂いも温度も何もかも。

 

 

 

そして今回私がナツヨムフェアにて、手にした作品はこちらの2作品。

普段だったら手に取らなさそうな、目を向けなさそうな作品で、それでもやっぱり私が好きそうな小説を選ばせていただきました。

はっきり言って、インスピレーションです。それ以上でも以下でもないです。

どちらも初めて読む著者さんなので楽しみ。

f:id:shiyunn:20160901210358j:image 

 

 

 

......ところで。

昨年のナツヨムで購入した作品はどうした。

だって?

shiyunn.hatenablog.com

 


 

あれです、あれ、まだ本棚で充電中なのです。

 『この闇と光』は読んで記事にしたけれど、残りの2作品もちゃんと「導線」はすでにできてるから。よむよ、よむよむ。ほんとだよ。

 

 

 

 

私にとってはまだこれが2年目のナツヨムなのですが、本のセレクトにこんなにわくわくするとは思ってなくて、すっかりお祭りの雰囲気に酔いしれる私。

実際に私が帯を書くならどんな帯を書こうかな、なんて考えているだけで秋が来てしまうくらい。

なんてことないブログの一記事ですが、こういったナツヨムフェアや実際の書店でしかできない催し、試みが広まったり、少しでも長続きしたりする一助になればよいな、と思います。