『七日目は夏への扉』 にかいどう青
翻訳家を生業としている主人公の朱音は、学生時代の恋人の死に目に会う夢を見る。
その後、彼女は友人から夢に出てきた元恋人が亡くなったこと、そして自殺の疑いがあることを電話で告げられる。
彼が亡くなった火曜日を中心に朱音はランダムに1週間を巡ることになる。
月曜日、水曜日、日曜日……と、不可解な時の流れに翻弄されながらも、朱音は元恋人の死の真相に近づいてゆく。
主人公の朱音は男勝りで竹を割ったような性格をしていて、 口ではすごく適当なことを言う割には決めたことや自分の信条は決して曲げない。
とりあえず、「お嫁さんにしたい美澄朱音部門第一位」の言い回しは胸の中のいつか言うリストに秘めておくことにします。
とりあえず、1週間の日々をランダムに生きてゆくというのが私にとっては新鮮で流されるように読みながら朱音とともに翻弄されていたのですが、ちゃんとメモみたいなものを取りながら読んだらそれはそれで面白いかも……と今更ながらに思います。
やり遂げたはずの仕事が消えていたり、目が覚めたら身に覚えのない怪我をしていたりと過去のことに目がいって「昨日の私は何をしたのだろう、何が起こったのだろう」ということばかり気にしてしまいそうだけれど、これは少し先の未来を先取りしていることにもなるのだと、最後の最後で気付かされる。
すべては元恋人の命を救うために。
もし私がランダムに時を過ごすとして。
月曜日、火曜日、水曜日を月曜日、水曜日、火曜日の順に過ごすとしたら。
月曜日、普通に生きて普通に眠る。
水曜日、はたと目が覚めたら手元に読みかけの本があることに気がつくが身に覚えがなく、寝ぼけていたのかと思い最初から読み始める。例えば50ページまで。
火曜日、先日(水曜日)の読みかけの本を51ページから読み始める。
……とすると。
いろいろと頭こんがらがりそうです。
水曜日にごみ箱の中にお菓子のゴミを見かけて、
次の日に来る火曜日にそのお菓子を食べなかったら、どうなるのだろう、とか。
今回、朱音はなんとなく自身が何のためにばらばらに時を生きているのか気付いていたようだけれど、元恋人を救うためだと信じて1週間を生き抜くことができるあたり、すごく朱音らしい、と思ってしまう。
そして、読み終えて。
表紙の少女がメガホンを手にしているのを見て、物語のその後を想像してみる。
なんだかんだ言って、朱音はいろんな人を巻き込んでみんな勝手に救ってしまいそう。
それなのに本人はそんなことなんでもないように適当に軽口を叩くんだろうな。