ゆうべによんだ。

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『初恋は坂道の先へ』

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『初恋は坂道の先へ』 藤石波矢

初恋は坂道の先へ (ダ・ヴィンチブックス)

 

藤石波矢さんのデビュー作品。

『昨日の君は、僕だけの君だった』で心打ちぬかれて以来、藤石波矢さんの作品行脚していたのですが、この作品を持ってひと区切り。

こちらは「本の物語」大賞受賞作なのですが、以前読んだ『神さまのいる書店 まほろばの夏』も同じ受賞作でしたね。

 

 

 

ある出来事を境に、急に恋人と音信不通になってしまい、そこから畳みかけるように様々な緊急事態に見舞われてしまう研介。

近所の小説家の家の蔵で、少し変わった少年と出会う田舎町に住む中学生のしなこ。

この2人の視点から、交互に物語は進んでいきます。

タイトルにもあるように様々な登場人物の「初恋」を巡りながら、研介としなこは成長してゆきます。

 

研介に関しては先も書いた通りトラブルが次々と舞い込み、少しずつ余裕がなくなってしまうのですが、色んな人の思いに触れながら、今まで一緒にいるのが当たり前のような存在で、深く考えることがなかった恋人について向き合ってゆく。

しなこは、少年との出会いをきっかけに、尊敬する小説家の話をきっかけに、これまで目を背けながらも燻っていた自分の居場所についてのもやもやとしたものの輪郭をはっきりとさせてゆく。

 

 

以下、ネタバレあり。

未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

◇ 

 

 

 

 

 

 

お話の構造、というか、研介としなこの物語の接点に関しては途中からそうではないのかな、と思っていました。

研介の恋人での名前が品子であることと、女子学生の呼ばれ方がしなこであることは、きっとこれミスリードだ、と。

読みながら先の展開について邪推してしまうあたり、擦れた本読みになってしまった、と一抹の哀愁に似た何かが云々。

 

でも、だからと言って、私にとって作品の良さが損なわれてしまう、なんてことはなくて。

 

 

しなこは作中で彼女自身が言及している通り、『耳をすませば』に登場する月島雫のように何かのために物語を書くのですが、品子も同様、前に進むための何かとっかかりが欲しくて小説に向き合う感じ、とてもすきです。

耳をすませば』でどこが好き? と訊くと、一連の恋模様を挙げる友人が多いのですが、私は、とにかく追いつきたくて肩を並べたくて一緒に隣を歩きたくて、がむしゃらに小説を書く雫の姿勢がたまらなくすきで。その苦しさも眩しさも何もかもがぎゅっと詰まった感じが。

作中には、好きな男の子のために小説を、とあるけれど、しなこも雫も小説を書きあげるのは紛れもなく、自分自身のためだと、私は思っている。

 

 

 

研介とその同僚の蓮見とのやり取りでの「好きっていう気持ちだけで、なんだってうまくいくって思ってたころ、なかったですか。背負うものが何もなかったころです」(p.136-137)という台詞がとても印象に残っている。

なんだってうまくいく、というより、好きっていう気持ちだけでいっぱいになってそれ以外は何も考えなかった頃をふと思い出す。

 

研介と品子の関係性もぐらりと揺らいでしまうかと思えば、最後は明るい結末で。

今思えば、結婚や未来を前にして迷子になってしまった品子を、研介はまた救ったのだと思うと少し微笑ましい。(今回、品子が迷子になった理由の一端どころかそのものが研介にあるのは確かだけれど......)

 

それでも、研介が浴衣姿で走れない品子をおぶって未来坂を駆け上がるシーン、すごくいい。

間違いなく、この先に様々なことが待ち受けているけれど、2人で未来に向けて足を踏みだしたのだと思うと、2人の行く末を案じながら読んでいた私としては安心する。

(『昨日の君は、僕だけの君だった』のような結末も、少しだけ覚悟していたのです)

 

 

 

今後の藤石さんの作品も楽しみです。

 

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