ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『15歳、終わらない3分間』

『15歳、終わらない3分間』 八谷紬

15歳、終わらない3分間 (スターツ出版文庫)

 

つい先日創刊されたと思えば、色々な書店にて展開されるのを見かけるようになって、今やレーベル名だけで私の財布を脅かす存在になりつつスターツ出版文庫。

ぼくは明日、昨日のきみとデートする』や『君の膵臓をたべたい」を皮切りに(だと私は勝手に思っているのですが)、こうして手に取りやすく読みやすい小説が本屋さんに並んでじわじわと売れていくのって、なんだかわくわくします。こうして少しずつ小説を手に取る人が増えたならよいな、と願うばかり。

特にスターツ出版文庫は、ひと昔前でいう「ケータイ小説」に近いものになるのですが、著者さんの書きたい感情や結末や物語がどの作品も色濃く出ていて、なんだかすきです。こういう小説は俗にキャラクター小説やライト文芸と呼ばれることもありますが、なんというか、誰かの「こんなお話しがあったらいいな」という想像に答えうるものだと、私は勝手に思っています。

 

 

 

 

前置きはこれくらいにしておいて。

今回手に取ることになったいちばんのきっかけは、いかにも時間SF要素のありそうなタイトルと装丁イラストなのです。

このタイトルにして、usiさんのイラストとくれば、法条遥さんの大好きな『リライト』から始まるシリーズを思い出してしまって、そうなってしまったら、もう、ね......?

リライト (ハヤカワ文庫JA)

リライト (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 

自殺を決意し、学校の屋上から飛び降りた主人公の高校1年生、弥八子。

落下に伴う浮遊感の中で世界に別れを告げるも、ふと気が付くと彼女はクラスメイト4人とともに教室にいた。

教室内は一切の通信が遮断され、窓や扉から外に出ることもできず、時計は17:27からの3分間をただひたすらに繰り返し続ける。

 

クラスメイトとともに、閉じ込められた原因や脱出方法を探すことになるのですが、弥八子ただひとりだけ、こうなってしまった原因は自分の自殺にあるのではないのかと胸に抱きつつもなかなかそれを打ち明けることもできずに。

 

 

 

 

もう、序盤のこの設定だけで、『リライト』じゃなかった、辻村深月さんの『冷たい校舎の時は止まる』だ! と体温の上がる私。

 

こちらは、どんな結末が待ち受けているのかとどきどきしながら読み進めました。

 

 

 

特に印象に残っているのは、今まであまり親しくなかった登場人物それぞれが自己紹介と称して、自分の嫌いなものを挙げる場面。

どの登場人物も使う表現は違えど、今のもしくは過去の自分が嫌いだったのだと告げるのですが。

(ちなみに、これは教室にクラスメイトが集まった理由とは別なので核心的ネタバレ、にはならない、はず......)

 

普段生きている日常生活で「自分が嫌いなんだよね」と言えば、卑屈だとかかなしくなるのでやめて、と言われてしまいがちであるけれど、あれもこれも手放しで褒められるほど自分のことを好きだと言える人の方が、きっと少ないはずで、登場人物たちそれぞれの「嫌い」に対する向き合い方が描かれていて、私もこの中のどれかひとつでも、私なりの形で誰かにあげられたらな、と思う。

 

そしてこの作品がそんな誰かの大切な何かになればいいな、とも。

 

 

結末もやっぱり私が想像していたものとは違うもので(大抵、趣味100%の結末を夢見がちな私の予想は外れる)、あの不思議な空間が存在していた意味を、こうして今一度思い返すと冒頭に自殺を決意した弥八子にどんな言葉をかけてあげられるかな、と思い巡らせてしまう。