ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『小説 君の名は。』

『小説 君の名は。』  新海誠

小説 君の名は。 (角川文庫)

 

8月に公開予定の映画『君の名は。

公開に先駆けて小説が刊行されたので早速読んでみました。

 

以前にどこかの記事で触れたかもしれませんが、新海誠さんの作品がすごくすきで今回の映画もとても楽しみです。

 『秒速5センチメートル』や『言の葉の庭』はもちろん、その他の作品のコミカライズやノベライズを見つけるとつい手に取ってしまいます。

 

今回の『小説 君の名は。』も、新海誠さんの作品の世界観を念頭に置いて読むのがすごい楽しくて、様々な場面の登場人物の表情や景色を早く映像で観てみたいです。

 

 

 

田舎に暮らす女子高校生の三葉と東京に暮らす男子高校生の瀧は、互いに不思議な夢を見る。

繰り返し繰り返し夢を見るにつれ、お互いが入れ替わっていることに気がつき、相手の存在を自覚してゆく。

 

三葉が授業を受ける場面にてちょっとした短歌が登場するのですが、短歌というだけで『言の葉の庭』の「なるかみの すこしとよみて ——」という短歌がふわっと浮かぶ。たのしい。

 

また、この三葉が暮らす田舎町にてカフェと銘打ってバス停のベンチで友人と些細な会話をする場面があるのですが、私の頭の中では『秒速5センチメートル』の『コスモナウト』というお話の舞台の田舎の雰囲気を思い描いてしまいました。

 

 

三葉は、確かに実在する少女なのだ。あいつの体温も鼓動も、息づかいも声も、まぶたを透かす鮮やかな赤も鼓膜に届く瑞々しい波長も、俺は確かに感じていたのだ。あれで生きていないのだとしたら、なにも生きていない。そう思えるくらいに、あれは命だった。三葉は現実だった。

p.113

こういう表現に出会う度に、どんな映像が出来上がるのかとわくわくしてしまう。

この瀧の自問する場面が完全に翻訳されるわけではないと思いますが、映画での登場人物の細かい動きや言葉を紡ぐ時の呼吸の置き方、そういった小さな何かで三葉という人物が、瀧という人物が出来上がっていくのを観てみたい。私の頭の中にいる三葉や瀧と答え合わせをするみたいに。

 

 

 

涙が溢れて、視界がまたにじむ。涙と一緒にまるで湧き水みたいに、あたたかな波のようなものが体中に広がっていく。私は泣きながら笑って、君に言う。

p.228

この場面の、三葉の表情が、1番観てみたい。

新海誠さんの作品に登場する人物の、いろんな感情を含んだ顔がたまらなくすき。何かを諦めたように憂いを帯びた目とか。

 

 

 

 

 

それから、『君の名は。』というタイトルの響きが、読み終えた今はすごく心地良い。

作品の後半にかけて、『君の名は。』のような台詞が何回か登場するのですが、その度に胸の内がぐっとなって溶けてゆく。

こう、鳥肌とか感涙とかとは違う、ざわざわする感じ。多分、春先に暖かい風を受けてなんだか泣きたくなるのに似ている。

 

 

 

 

 

 

夏がまた少し、待ち遠しくなりそうです。