ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『初恋ロスタイム』

『初恋ロスタイム』  仁科裕貴

初恋ロスタイム (メディアワークス文庫)

 

『終わる世界のアルバム』(『終わる世界のアルバム』 - ゆうべによんだ。)と一緒にコメントにておすすめしていただいた作品。

 

こちらは割と最近刊行された作品で、 書店で何度か見かけたことがあり、タイトルや表紙イラストは印象に残っていました。

 

主人公の少年の元に訪れた、後にロスタイムと呼ばれることになる不思議な現象。

毎日午後1時35分から1時間だけ世界の時間が止まり、主人公の相葉考司だけが意識を持って自由に動き回ることができる。

ロスタイムの間にどこへ行こうと何をしようと1時間後には1時35分の状態に戻されてしまう。

健全(?)な男子高校生らしくロスタイムを使って些細な夢を叶えようとする中、孝司は琥珀色の瞳の少女、篠宮時音と出会う。

 

次第に時音と言葉を交わすようになり、ロスタイムの中でいろいろな場所へ遊びに行くことになる。

 

2人のロスタイムの存在理由を語る場面が変に理屈っぽくて微笑ましい。

こんな超常現象、分かるはずもないのにあーでもないこーでもないと言葉を交わすのがきっと楽しくて仕方がないのだな、と。

もちろん本人たちはそんなこと、おくびにも出さないけれど。

最終的には、神さまが見落とした時間でロスタイム、なんて名前までつけて。

 

 

 

ロスタイムで時音と過ごす時間が増える一方で、現実世界では一切交わりがないことが孝司の中で「痛み」に変わってゆく。

一歩でも近づこうとする時、華やかだったロスタイムでの時間の意味がすべて解け、虚構でしかなかったのだと気が付いてしまう。

 

 

 

 

……なんとなく、そんな感じなのかな、とは予想していたのですが、時音の瞳の色にもちゃんと理由があったんですね。

 

最後に、4ページ程のロスタイムという名の短いお話が締めとして存在しているのですが、この完全なまでの予定調和がすごくよく似合う。よい意味で。

多分、神さまが見落としたのではなく、ちゃんとロスタイムにも意味があったんだと私は思うのです。

 

素敵な結末までも含めて、神さまからの贈り物だと、信じられるくらいにとても綺麗なお話でした。