ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『マツリカ・マジョルカ』

『マツリカ・マジョルカ』  相沢沙呼

 

マツリカ・マジョルカ<「マツリカ」シリーズ> (角川文庫)

 

相沢沙呼さんの「マツリカ」シリーズ第1作。
 
相沢沙呼さんの作品については、過去の新潮文庫nexの記事(新潮文庫nex総選挙とこっそり推したい選外作品。 - ゆうべによんだ。)で触れたことがあるのですが、こうして作品の感想を単発で記事にするのは初めてですね。
本当にお気に入りの作家さんのひとりで、文庫化を待ちわびていました。
 
 
ライトノベルレーベルから小説を刊行したり、漫画の原作もされていて、『緑陽のクエスタ・リリカ』や『現代魔女の就職事情』もばっちり読んでます。
 
 
 
今回のお話の主人公の柴山祐希は、学校に居場所を見つけられない男子高校生。
窓から身を乗り出す少女を見かけ、その身を案じ衝動的に廃墟に足を踏み入れたことをきっかけに、どこか大人びて妖しい雰囲気の女子高生マツリカと出会う。
 
何事にも動じないマツリカさんの態度に終始気押され、パシリ扱いされながら、マツリカさんの提示する謎の調査を行ってゆく。
 
そんなマツリカさんに調査を押し付けられる謎は、学校に現れる原始人やゴキブリ男など、どこか要領を得ないものばかり……。
 
 
 
 
 
 
4つの連作短編から構成されているのですが、一見、掴み所のない謎と打って変わり、どのお話の結末の背景にはボタンを掛け違えてしまったような「非情さ」があり、その結末にたどり着く度に文章からふと目を離し長めの息を吐いてしまう。
 
 
そういう「非情さ」という意味では、3つめの「いたずらディスガイズ」というお話がとても印象的でした。
文化祭にて柴山くんが盗まれたアリス服を巡り奔走するのですが、その結末もさる事ながら、その後に語られる柴山くんの心境も心に残る。
 
クラスで浮いていることを自覚していて、誰にも干渉されずにひっそりと生きていたいと願いながらも、心のどこかできらきらとした学校生活を目で追ってしまう。
柴山くんは、きっと、何事にも自信がなくて、自信を持つきっかけがなくて、自分で自分を上手に褒めてあげることができない人。
気が付けばどんどん内側へ気持ちが向かってしまうような。
柴山くんだけでなく、相沢沙呼さんの作品には、同じように繊細な登場人物が多く、ちっぽけでもかけがえのない何かを掬いとって欲しい、と願いながら読み進めてしまう。
 
 
 
 
 
お話の結末の鮮やかさで言えば、最後の『さよならメランコリア』が私の中ではいちばん。
お話全体の締め、という役割もあるので一層そう思えるのかもしれません。
柴山くんの姉の卒業アルバムの写真が切り抜かれた理由と真実。
読み終えると、今までのお話の柴山くんの行動により納得できるところが、またとてもよい。
少しでも柴山くんが前を向く形で終えられていて、どこか安心する。
 
 
 
 
 
 
続編に当たる『マツリカ・マハリタ』の文庫化が今からとても待ち遠しい……
し、
何より3月には同著の『卯月の雪のレター・レター』の文庫が刊行されるのが今は何よりも嬉しい。